フランスと日本、子育てにまつわるちがい
乳児育児編

ところかわれば

森弘子

「フランスと日本、子育てにまつわるちがい」と題して、これまで妊娠と出産について、フランスと日本とのちがいをご紹介しました。
今回は乳児育児編。

息子は現在、生後7ヶ月。生活のリズムもついて、お世話もずいぶん楽になりました。これまでの乳児育児を通して、フランスと日本はちがうなあと感じたところや、これは特によいなと思うことを挙げていきたいと思います。

1.みんなが助けてくれる

フランスで子育てをしていて、子育てしやすいと感じる一番のポイントです。妊娠中もそうでしたが、子どものこととなると、多くのひとがとてもやさしく接してくれます。顕著なのはメトロにて。パリのメトロは古いので、多くの路線ではエレベーターは疎か、エスカレーターも設置されていない場合がほとんどです。それでもみな果敢にバギーで乗り込んできます。大抵は階段で立ち往生するのですが、誰かしら「手伝いましょうか?」と声をかけてくれます。他にも、レジの長蛇の列に並んでいると、前にいたマダムに「赤ちゃんがいるんだから、先頭に行きなさい」と言ってもらったり、道端で息子が大泣きしてしまうと、数人が入れ替わり立ち替わりきて「お腹空いたのかしら?」「暑いんだと思うよ」とコメントやアドバイスをくれて去って行ったり。みな、赤ちゃんがいるのだから大変、そして赤ちゃんが身のまわりにいるのが当たり前ということを共有している、そんな雰囲気があります。

2.3ヶ月以降はミルクで育てる場合が多い

フランスでは、産休を生後3ヶ月まで取得し職場に復帰する場合が多く、そのタイミングで母乳からミルクに移行する人が多いようです。以前にも記事にしましたが、フランスはオーガニックの食材が多様で手に入りやすくなっています。多分にもれず、粉ミルクも。日本のように母乳を強く推奨する文化はなく、上記の早期職場復帰のため、ミルクの需要が多いことも多様さを生み出す要因になっていると思います。種類は牛だけでなく、アレルギーの出にくいと言われているヤギのもの、大豆由来のものも販売されています。

ところかわれば 森弘子 フランス 育児 乳児 子育て

オーガニック専門店のNATURALIAにて。写真中央部の列がミルクで、全てオーガニック。JUNEOはヤギのミルク、値段は牛のミルクの1.5倍近い。左の棚は離乳食でこれもオーガニックで種類は豊富。

話は少しずれますが、ミルクといえば、日本でも先日使用開始となって話題になった液体ミルク。産後、難産だったため母乳の出が悪く、息子の体重が減ってしまい、出産3日後にミルクを足すことになりましたが、その際に液体ミルクを使いました。プラスチックの容器に入っており、温めずそのまま封を開け、吸い口をキャップがついていた部分につけて完了。準備はわずか十数秒です。このミルクのおかげで息子は体重も増え、夜もよく眠り、無事退院できました。

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封を開けると2時間以内に使い切らないといけない。勿体無い気もするが吸い口も衛生的に保つため使い捨て。封を開けなければ常温で一年ほど保存できる。

3.ワクチンは自ら薬局で買って小児科に行く

フランスではワクチンを自ら薬局で購入します。まずは処方箋をかかりつけ医に出してもらい、それを持って薬局に行きます。多くは生ワクチンなので、接種する直前に購入するか、接種するときまで間があるときは自宅の冷蔵庫で保管します。これは乳児の予防接種でも同様です。購入するワクチンには、注射針もついていて、箱をそのままかかりつけ医に渡すとその場で組み立てて注射をしてくれます。デメリットはワクチンを持って行くのを忘れると受けられないというリスクがあること。先日5ヶ月検診の際にうっかり自宅にワクチンを忘れて、午後にもう一度行く羽目になってしまいました・・・。

4.親子別室

入院時は母子同室の場合が多い一方、退院し自宅で生活を始めしばらくすると、寝室は親子別室にする場合が多いのがフランス。大人は大人の空間、子どもは子どもの空間で、というのが基本のようです。とはいえまだ月齢の低い場合は乳幼児突然死症候群(SIDS)などのリスクもあるため、部屋にカメラを設置して手元のモニターで常に見られる状態にしたり、掛け布団は顔にかかって窒息すると危険なので、Gigoteuseという肩のところで止められる、寝返りをうっても顔にかからない寝袋を使用します。産院でも小児科でも指導されたのが、ベビーベッドの上には硬いマットレスにシーツをかけたもの以外は一切何もおいてはいけないことと、Gigoteuseを必ず使用することです。日本とは異なり常に親の目をかけないフランスならではの対策です。

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ヨーロッパはベッド文化なので、赤ちゃんもベビーベッドで眠る。写真のように寝返りを打っても寝相が悪くてもはだけないので風邪をひかない。写真は夏用のもので、冬は厚手のものを利用。

5.新生児から整体に行く

フランスで育児をしていて一番ちがいを感じたのが、新生児の時から整体に行くこと。出産前から友人に話は聞いていたのですが、産後すぐに自宅に来てくれた助産師さんからも、産後のヨガクラスの先生からも「Ostéopathie(整体)は行かないの?」と聞かれて、本当に行くんだ!とびっくりしました。息子は難産で、鉗子・吸引でなんとか引っ張り出してもらい頭蓋骨に負担が大きくかかったため、ぜひ行くようにと勧められました。小児科の先生に推薦してもらった整体に行き、約1時間施術してもらいました。整体の先生は新生児、乳幼児、妊婦さんを主に専門とする先生で、子どものあやし方もお手のもの。息子も頭を触られる以外はニコニコで施術されていました。施術できる月齢は0ヶ月からでもOK、早ければ早いほど良いそうです。

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Ostéopathie(整体)を受ける息子。当時生後3ヶ月。腹ばいにすると右手が前に出ないことが多かったが、施術後にはしっかりと両手を前につけるようになった。

他にも項目にはあげませんでしたが、離乳食は早くて生後4ヶ月から、野菜のピュレから始めます。また、フランスでは授乳室を見かけません。ミルク育児に早々に移行するということも理由ではありますが、時々カフェや公園でさりげなく母乳をあげているママを見かけます。それも特に誰も指摘しませんし、ほぼどこでもあげられるぶん、場所を探さなくてよいのでとても楽でもあります。それも赤ちゃんがいるのが当たり前、という空気が背景にあると感じます。とはいえ、日本のように授乳室で落ち着いて授乳できる、というのもとても魅力的。それぞれのよいところがミックスされると、みんなが心地よい環境が生まれる気がします。