森里海の色
木版画が彩る世界「イロハモミジ」

庭木にもよく用いられるイロハモミジ。秋のイメージがつよいけれど、この時期の旺盛な葉や花もまた、よいものです。


 
イロハモミジは、漢字では伊呂波紅葉と書く。

複数に分かれた葉を、いろはにほへと、と数えたことが名前の由来、とされている。
問題は、「紅葉」のほうだ。コウヨウと書いてモミジと読ませる。それぐらい、モミジは紅葉の代表格のような扱い、なわけだけど、今回は5月に取り上げている。
もともとは、モミジの語源は「揉み出(もみづ)」で、染色を指しているようだ。やはり、紅く染まった葉が由来、ということなのだろう。

敢えて、紅葉ではないモミジの魅力を考えよう。紅葉して落葉するから、翌春には若葉が茂ってくる。春先からは、花も咲かせる。
今年は5月からずいぶん暑くなっている。そんなときにも、モミジの影は、そのシルエットも相まって、なんとも心地良い。

そうやって考えれば、秋の紅葉ばかりに注目しているのがもったいなくなる。
今回の版画を見れば、その意味がわかってもらえるだろう。

と、自分で気がついたような風に書いたけど、そんなこと、すでにみんな気づいているわけで、
「青楓」は夏の季語だし、「徒然草」には、「卯月ばかりの若楓、すべて、万の花・紅葉にもまさりてめでたきものなり。」と書かれている。

この文が納められている139段は、「大方、何も珍らしく、ありがたき物は、よからぬ人のもて興ずる物なり。さやうのもの、なくてありなん。」と締められている。

珍しいものは、ちょっとアレな人が持って喜ぶもので、そんなものないほうがいい、ということだ。
たまには、「さやうのもの、なくてありなん」とキメてみようぜ。

文/佐塚昌則