森里海の色
四季の鳥「オオルリ」

早春の渓谷に響く美声

さへづりに色あらば今瑠璃色に  西村和子

ピーリーリージッジ、ポピリーポピリージッジ。4月中旬、芽吹き始めた渓流沿いの林道を歩いていると、見上げる尾根の梢から歌い上げるような鳥の美声が聞こえてきました。雄のオオルリが縄張りを宣言しているのです。4月に入り、わたしが暮らす神奈川県でも夏鳥が日を追うごとに種数を増していきますが、そのなかでもオオルリは特別の鳥です。わたしにとってオオルリの到来と共に新しい探鳥の1年がスタートするのです。
オオルリは全長17センチ、スズメよりやや大きい鳥です。成鳥の雄は頭部から体上面は瑠璃色、顔から胸にかけては黒、腹部から尾羽裏にかけては白い美しい鳥です。雌は頭部から体上面・胸・脇にかけて淡褐色、喉から腹部にかけては白く、雄に比べてかなり地味な色をしています。
オオルリの雄は雌よりも少し早く渡来し、雄同士の縄張り争いの末、それぞれのテリトリーが定まると、雄の選んだ場所に雌が巣をつくり、つがいでテリトリーを守ります。
繁殖期(6~8月)になると、渓流沿いの切り立った岩のくぼみなどに柔らかいコケなどを集めて雌が巣をつくります。

瑠璃鳥

 

あるとき、渓流沿いの崖に沿ってへつっていると、ちょうど手を置いた崖のくぼみにオオルリの巣があって驚いたことがありましたが、ほんとうに驚いたのはオオルリのほうだったでしょう。もっと驚いたことがありました。公園のトイレで小便をしているときに何気なく上方を見ると、つくりかけのオオルリの巣が棚に二つあったのです。水が流れ、タイル張りの壁が彼らの巣づくりの環境に類似しており、カラスやヘビなどの天敵にも安全で、きっとおあつらえ向きに映ったのでしょう。
オオルリは10月まで日本に滞在し、インドシナ、フィリピンなどに渡って越冬します。
夏から秋にかけてはその年に巣立った若鳥を親鳥と共に森のなかで観察できますが、やはり撮影しやすいのは4月中旬からGWにかけて木々の葉がまだ繁茂せずにオオルリの姿が見やすい時期です。今年もオオルリの撮影に足繁く通うことになりそうです。

著者について

真鍋弘

真鍋弘まなべ・ひろし
編集者
1952年東京都生まれ。東京理科大学理学部物理学科卒。月刊「建築知識」編集長(1982~1989)を経て、1991年よりライフフィールド研究所を主宰。「SOLAR CAT」「GA」等の企業PR誌、「百の知恵双書」「宮本常一講演選集」(農文協)等の建築・生活ジャンルの出版企画を多く手がける。バードウォッチング歴15年。野鳥写真を本格的に撮り始めたのは3年前から。