森里海の色
四季の鳥「キジ」

雄の母衣打ち

キジは桃太郎の家来になったり一万円札に登場したり、日本人には馴染み深い鳥です。1947年には国鳥に制定されています。
昨年の5月中旬、探鳥会のバスツアーの準備のために、リーダー3人で信州の高原にロケハンに行きました。朝露のびっしり付いた草地の中を目当ての鳥を探して2時間近く歩き回りましたが、かんばしい成果がありません。太陽は高度を上げてジリジリと気温が上がり、辺りに陽炎が立ち始めました。そろそろ場所を移動しようかと相談していると、近くで「ケーン」と大きな声がして、その後に激しく羽ばたく音がしました。雄のキジの母衣ほろ打ちという縄張り宣言でした。
キジは動かず、私たちのようすを先ほどから見ていたようでした。私の住む町でも時々キジと出くわしますが、いつも先にキジのほうがこちらのようすをじっと伺っているといった感じがします。思った以上に身近な鳥なのに、こちらが気が付かないことが多いのでしょう。
キジは本州から九州まで留鳥として分布する鳥で、雄は全長80センチほど、尾が長く、首から胸にかけて青緑色で目の周りに鮮やかな肉垂があります。雌は全長60センチほどで、地味な茶褐色をしています。キジは繁殖期になると、雌は数羽で複数の雄の縄張りをまわり、雄はそれらの雌に対してディスプレイを行い、雌は気に入った雄と交尾するという乱交性をとることが知られています。
田んぼの畦や草地から親子連れでひょこり顔を出すのが見られるのもこれからのシーズンです。

著者について

真鍋弘

真鍋弘まなべ・ひろし
編集者
1952年東京都生まれ。東京理科大学理学部物理学科卒。月刊「建築知識」編集長(1982~1989)を経て、1991年よりライフフィールド研究所を主宰。「SOLAR CAT」「GA」等の企業PR誌、「百の知恵双書」「宮本常一講演選集」(農文協)等の建築・生活ジャンルの出版企画を多く手がける。バードウォッチング歴15年。野鳥写真を本格的に撮り始めたのは3年前から。