S設計室北小金のいえ

住まいのグラフィティ

Vol.54  北小金のいえ 
S設計室

生活の軸と地球の軸

緩やかな北側斜面の最下端に位置する40坪余りの敷地は、北の道路面より1.5mほど高く、その先には生産緑地が広がっています。老夫婦の終の住処として「庭のある平屋」を建てるのには少し物足りない広さでしたが、庭/テラス/ポーチを敷地四隅に分散配置することで対角の軸を導入、視線・動線を敷地内で最大限に伸長させて北西へと開き、これを生活の軸としました。また、北向きの1階リビングでは得難いダイレクトゲインを補うため、屋根面で温めた空気を基礎蓄熱経由で床暖房とする温熱環境計画を採用し、屋根面が集熱に最適化されるよう地球の軸に沿わせました。捻れた2つの軸が矯正されることなく共存することで、生き生きとした住宅の原型が形成されています。

白石 圭

お洒落な変形屋根南側外観。板金に強化ガラスをのせただけのシンプルなソーラー屋根。

ソーラーファンユニットのある居間玄関ホールからキッチン、リビングへと北西に向いた生活の軸を見通す。

北小金のいえのシンプルなキッチンキッチンから洗面室、浴室、西のテラスまでひと繋がりの水回りを見通す。

斜め壁面の部屋斜めになった壁面は鋭角を避けることでコンパクトながら使いやすい居室を形成している。

リビングから外へ繋がる東のテラスから北のテラスを見通す。1.5mの擁壁上で程よくプライバシーを守りつつ北側への視界が広がる。

リビングと二階へ繋がる階段居間・食堂。立下りダクトが屋根面のソーラーファンユニットから床下へ真直ぐに家の中心を貫いている。

斜め天井の客間小屋裏の客間。生活の軸に合わせて立てた壁面と地球の軸に合わせて架けた梁が交差している。

DATA
■物件名:北小金のいえ
■所在地:千葉県松戸市
■家族構成:2人(夫婦)
■構造:木造2階建
■敷地面積:144.28㎡(43.64坪)
■延床面積:96.01㎡(29.04坪)

■竣工年月日:2019年8月
■設計:白石圭(S設計室)+中島壮(中島壮設計)+橋本圭央(Cosmopolitan/Workshop)
■構造設計:照井清道(照井構造事務所)
■施工:分離発注方式(施工管理:S設計室)
■写真:本城直季

白石 圭白石 圭しらいし・けい1977年千葉県生まれ。2002年東京藝術大学美術学部建築科卒業。2008年Cranbrook Academy of Art Dept.of Architecture(M.Arch) 修了。2009年〜2011年N設計室勤務。2011年S設計室開設。2020年東京建築士会住宅建築賞受賞(北小金のいえ)。
中島 壮中島 壮なかしま・たけし1969年福岡県生まれ。1997年東京藝術大学美術学部建築科卒業。1999年〜2010年坂牛卓一級建築士事務所。2007年日本建築学会作品選奨(リーテム東京工場)。2011年中島壮設計開設。2020年東京建築士会住宅建築賞(北小金のいえ)。主な著作に「Architecture as Frameand Reframe」(2016年、共著)など。現在、東京理科大学非常勤講師。
橋本圭央橋本圭央はしもと・たまお1976年高知県生まれ。2001年東京藝術大学美術学部建築科卒業。2008年AAスクール Diploma Program 修了。2013年Cosmopolitan/Workshop設立。2013年SDレビュー入選(「Seedling Garden」)。2020年東京建築士会住宅建築賞受賞(北小金のいえ)。主な論文に「The Polyrhythmic-scape of the City」(2018年、Materia Arquitectura Journal)など。現在、日本福祉大学助教/東京藝術大学、法政大学、千葉大学非常勤講師。

著者について

白石 圭/中島 壮/橋本圭央<br />

白石 圭/中島 壮/橋本圭央
しらいし・けい/なかしま・たけし/はしもと・たまお

白石 圭(左上)/しらいし・けい
1977年千葉県生まれ。2002年東京藝術大学美術学部建築科卒業。2008年Cranbrook Academy of Art Dept.of Architecture(M.Arch) 修了。2009年〜2011年N設計室勤務。2011年S設計室開設。2020年東京建築士会住宅建築賞受賞(北小金のいえ)。

中島 壮(右上)/なかしま・たけし
1969年福岡県生まれ。1997年東京藝術大学美術学部建築科卒業。1999年〜2010年坂牛卓一級建築士事務所。2007年日本建築学会作品選奨(リーテム東京工場)。2011年中島壮設計開設。2020年東京建築士会住宅建築賞(北小金のいえ)。主な著作に「Architecture as Frameand Reframe」(2016年、共著)など。現在、東京理科大学非常勤講師。

橋本圭央(下)/はしもと・たまお
1976年高知県生まれ。2001年東京藝術大学美術学部建築科卒業。2008年AAスクール Diploma Program 修了。2013年Cosmopolitan/Workshop設立。2013年SDレビュー入選(「Seedling Garden」)。2020年東京建築士会住宅建築賞受賞(北小金のいえ)。主な論文に「The Polyrhythmic-scape of the City」(2018年、Materia Arquitectura Journal)など。現在、日本福祉大学助教/東京藝術大学、法政大学、千葉大学非常勤講師。

連載について

この連載は、住まいづくりの最前線を伝えるコーナーです。設計事務所や工務店の建築事例をグラフィカルに紹介していきます。どんな住宅と出合えるだろう、そんなワクワクした気持ちで覗いてください。