色、いろいろの七十二候

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楓蔦黄・秋の夜長

秋の夜長を楽しむ
画/いざわ直子
こよみの色
霜降
鶸色ひわいろ #D7CF3A
・鶸の羽毛の色を模した、緑みの黄色を代表する色名。このやや強い緑が、鶸萌黄(ひわもえぎ)
楓蔦黄
刈安色かりやすいろ #F5E56B
・薄い青色がかった黄色。ススキの仲間、刈安で染められた色。刈安という名は、「刈り易い」ことから付けられ、入手が容易であることから希少価値に欠けるとされた。

二十四節気は「霜降」を迎えました。末候は「楓蔦黄(もみじつたきばむ)」。東北などの北国では大地に霜が降りるようになり、紅葉する地域も少しずつ広がっていきます。また、この時季に吹く風を「木枯らし」と呼びます。

秋分の頃、昼と夜の長さが同じになります。そこから冬至に向けて日が短くなり、夜が長くなっていきます。

実際に夜が最も長いのは、冬至のころなのですが、「秋の日はつるべ落とし」と表されるように、夏に比べてすっと暗くなってしまうこと、そして日に日に夜が長くなることが実感できることが、「秋の夜長」の所以でしょうか。

芸術の秋という表現は、「日展」「院展」「二科展」の、三大美術団体展がともに秋に開催され、美術の秋、という表現が転じたものだという説があります。
七十二候に目をむけると「楓蔦黄」。生命活動そのものが生み出す、ひとときだけの紅葉は、芸術といっても差し支えないものでしょう。行楽地に出かけて雄大な紅葉群を愉しむのもよいですが、身近なところにも生命の芸術は溢れています。

三寸の苗も楓の紅葉かな  正岡子規

秋の芸術は、視覚だけでなく聴覚にも訴えてきます。

行水の捨てどころなし虫の声  上島鬼貫

こんな句からも感じられるように、秋という季節は、日本人の、日本人的な感覚が、一番鋭くなるような季節ではないでしょうか。

あれ松蟲が鳴いてゐる
ちんちろちんちろ ちんちろりん
あれ鈴蟲も鳴き出した
りんりんりんりん りいんりん
あきの夜長を鳴き通す
あゝおもしろい蟲のこゑ

きりきりきりきり きりぎりす。
がちやがちやがちやがちや くつわ蟲
あとから馬おひおひついて
ちよんちよんちよんちよん すいつちよん
秋の夜長を鳴き通す
あゝおもしろい蟲のこゑ
(文部省唱歌「蟲のこゑ」)

今回の絵のテーマになっていて、「蟲のこゑ」にもある「夜長」も、秋の季語です。
十三夜、十五夜、中秋の名月は良い月が見られたでしょうか。
日本の季節もなんだか変わってきて、夏が終わるとすぐ冬が来るようだ、という声も聞くようになりました。

「霜降」の次は、「立冬」。もう、冬がやってきます。遠ざかる夏と、近づく冬を感じながら、秋の夜長、月を見ながら散歩をして見ませんか。

※リニューアルする前の住まいマガジンびおから再掲載しました。
(2012年10月23日の過去記事より再掲載)