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薬効と独特の香りが魅力の
らっきょう

夏至・一年で最も日が長い一日です。
夏至を境に、冬至に向けて、日は段々短くなっていきます。
多くの地域では梅雨の最中で、蒸し暑い日々が続いているのではないでしょうか。

今回とりあげるのは「らっきょう」。くせがあるものの、その薬効はなかなかのものですよ。

生らっきょうが出回るのはこの時期のみ

らっきょうはユリ科の多年草野菜で、地下の鱗茎りんけいを食べます。
独特の香りと辛み、ぱりっとした歯ごたえのよい食感が特徴で、主に甘酢漬け・塩漬け・醤油漬けなどにして食べます。らっきょうの甘酢漬けは、カレーの付け合わせに欠かせませんよね。その他、炒めたり、煮たり、薬味や、いろいろな料理のトッピングなどの使い方もあります。

らっきょうの漬物は年中出回っていますが、生らっきょうが出回るのは5月~7月の時期のみ。他の時期には手に入らない、季節感のある野菜です。
この時期、らっきょう、そして梅や新しょうがの漬物をつくるのが恒例になっているという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

らっきょうは、泥付きのものと、洗いらっきょうが売られています。
この時期はらっきょうの生長が旺盛なため、泥付きらっきょうは芽が出やすいので、買ったらなるべくその日のうちに漬けるとよいでしょう。
洗いらっきょうは、皮をむき、茎と根を切り落として、芽が出ないように塩水などで洗ったものです。

泥つきらっきょう

泥つきらっきょう

洗いらっきょうは、下処理が済んでいるのですぐに使えるという利点がありますが、できたら新鮮な泥付きらっきょうを手に入れて、漬けたいところ。
なるべく水を吸わせないように手早く洗うのがおいしく漬けるコツで、漬け上がりの歯ごたえに違いが現れるようです。

らっきょうを洗って皮をむく

泥つきらっきょうを洗って皮を剥いたもの

らっきょうを選ぶポイントとしては、外皮に傷がなく、ふっくらとして丸みのあるもの、中心の芽先が伸びていないもの、粒が大きめで揃っているものを選ぶとよいでしょう。

らっきょうの来歴

さて、そんならっきょうの来歴を見てみましょう。

らっきょうの原産地は中国だとされています。
中国での栽培の歴史は非常に古く、紀元前3世紀以前から栽培されていたと考えられています。

日本へは、中国から平安時代に伝わり(9世紀には伝来していたと考えられています)、主に薬用として用いられていました。

「らっきょう」の名は中国名の一つ「辣韮ラッキョウ」に由来しますが、平安時代は美良みら(ニラ)に対応して、「於保美良おほみら」(大ニラ)と呼ばれました。

食用として栽培されるようになったのは、江戸時代のことです。

独特の香りと薬効

薬用として用いられていただけあって、らっきょうには様々な薬効があります。

漢方薬では「薤白がいはく」として用いられ、温中通陽・行気止痛の効用があるとされています。

温中通陽とは、お腹を温め、陽の働きを活発にすること。行気止痛とは、気を通して痛みを止めること。

お腹を温めたり、痛みを止めたり、というのは理解しやすいものですが、陽・気などの概念は、中医学に基づくもので、西洋医学にはない概念です。
らっきょうは、生薬としても使われますが、料理にも利用でき、これを適食中薬といいます。

他にも、俗に言う「血液サラサラ」効果もあるといわれています。

さて、ネギやショウガなどの香味野菜の付け合せを「薬味」と呼びます。

この「薬味」、本来は中医学(中国伝統医学)でいう、五味ごみが元になっています。五味とは、食べ物の味を酸・苦・甘・辛・しおからいの5つに分類したものです。
中医学では薬食同源という考え方をもち、食材を「薬味」と呼ぶようになりました。
らっきょうは五味の中では「辛」に属す適食中薬です。

らっきょうの魅力は独特の香りです。これが苦手で、という人もいるようですが、らっきょうの香りのもとはS-アルキルシステインという成分で、脳細胞の酸化防止に効果があるといわれています。

らっきょうは、収穫後も芽を伸ばし続ける生命力をもつ野菜です。精力がつくため、修行僧は食べてはいけないものとされていたそうです。

らっきょうとカレー

らっきょうといえばカレーに付け合わせられることが多いですね。カレーの本場・インドでは付け合せとしてアチャールという、オイルとスパイスで漬けた野菜が使われます。日本のカレーでは福神漬とらっきょうの甘酢漬けが2大勢力ですが、どちらもアチャールの影響があるのかもしれません。

アチャールとらっきょう

アチャールとらっきょう


どうしてカレーにらっきょうなのか。アチャールの影響もさることながら、らっきょうに含まれるアリシン(硫化アリル)はビタミンB1(豚肉)の吸収を高めるため、実に理にかなった付け合せだといえます。

エシャロット・エシャレット

エシャレット

エシャレット。実はらっきょうです。


らっきょうの辛味を抑えて育成し、葉付きで早めに収穫したものが「エシャレット」として流通しています。
若採りのらっきょうになにかいい名前を付けたいと考えた市場関係者が、フランス語のéchaloteからとった「エシャレット」でした。
ところが、フランス料理の香味野菜として欠かせない小型タマネギが「エシャロット」として流通しており、こちらが本物であるにも関わらず、「ベルギー・エシャロット」などと呼ばれています。
余談ですが、「びお」編集部のある静岡県浜松市は、若採りらっきょうのほうの「エシャレット」の発祥の地なんです。生産も多く、市内では多く流通しています。実はらっきょうなのですね。

農林水産省発表の地域特産野菜の生産状況によると、エシャレットとらっきょうは別のものとして扱われています。らっきょうの主要産地が鹿児島、宮崎、鳥取、福井などであるのに対し、エシャレットは茨城と静岡での生産がほとんどです。農作物としてはまったくの別物と考えたほうがいいようですね。

島らっきょう

島らっきょう

島らっきょう


沖縄で採れるらっきょうは「島らっきょう」と呼ばれています。本土のらっきょうに比べると匂いが強く、それがやみつきになる人も。炒めたり、天ぷらにしたり、生のまま鰹節をかけて食べたり。お酒のつまみにも抜群です。
島らっきょう

甘酢だけじゃない。らっきょうの食べ方

らっきょうというと甘酢漬けの紹介が一般的です。
甘酢漬けを常温で長期間保管するこつは、酢に漬け込む前に一旦塩漬けにして、らっきょうの成長をストップすることと、保管の容器を殺菌すること。

らっきょうの甘酢漬け

甘酢漬け。前処理をきちんとすれば常温で長期間保存出来ます。


甘酢漬けに飽きたらない人は、焼いて食べてみましょう。
ただ串に挿して網で焼くだけの、シンプルなものですが、らっきょうの魅力たっぷりです。醤油をちょっとたらして。
焼きらっきょう

焼いてみる。シンプルでらっきょう特有のクセもありますが、酒の肴にピッタリ。


本来は島らっきょうを使うであろう、らっきょうチャンプル。炒め物です。豆腐に焼き目をつけ、スライスしたらっきょうを炒め合わせます。
醤油と塩で味付けをして、かつお節をまぶして出来上がり。かつお節とらっきょうはかなり合います。豆腐なしで、らっきょうをまるごと炒めてもよし。
らっきょうチャンプルー

炒めてみる。「らっきょうチャンプル」です。


揚げてみます。食感を残したい人はさっと揚げて。らっきょうが苦手な人には、じっくり揚げるとホクホクした食感になって、食べやすいかもしれません。
らっきょうの天ぷら

揚げてみる。手前がらっきょうの天ぷらです。


調味料として。みじん切りにしたらっきょうは、いろいろな料理に使えるソースになります。甘酢漬けの酢と和えても美味。
らっきょうのみじん切り

甘酢漬けをみじん切りにして、浸かっていた酢で和えると素敵なソースが。


らっきょうは保存がきくのも魅力です。生命力の強い野菜で、収穫後も芽が伸びてきますので、塩で成長をストップさせます。
らっきょうの塩漬け

洗ったらっきょうは塩漬けにして保存しておきます。


塩をまぶして、唐辛子と一緒に密封して冷蔵庫へ。使うときは塩抜きをします。これでいつでもらっきょうが食べられます。
らっきょうの塩漬けをビニールに入れる

唐辛子と一緒にビニールへ。空気を抜いて冷蔵庫保存で長期間持ちます。

というわけで、らっきょうづくしでした。らっきょうで、夏にむけての体力を養いましょう!

泥付きらっきょう写真:フォトライブラリー
http://www.photolibrary.jp

※リニューアルする前の住まいマガジンびおから再掲載しました。
(2010年06月21日の過去記事より再掲載)