びおの珠玉記事

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テレビ安全週間

テレビを見る赤ちゃん

今週は、「テレビ安全週間」というものだそうです。

安全週間がある、ということは、つまるところ、テレビは危険である、という裏返しでもあります。はてさて、いったい何が危険なんだろうなあ…。

愛情点検

順当に考えればコレ。
テレビのカタログを見ると、各社とも一様に「愛情点検」「長年ご使用のテレビの点検を!」とうたっています。
テレビの愛情点検
テレビ安全週間を制定した、とされる日本電子機械工業会は、現在では電子情報技術産業協会となって、以下の様な「テレビと安全」のページを公開しています。

長年お使いのブラウン管テレビについて
http://www.jeita.or.jp/japanese/anzen/television/index.html

転倒・落下防止対策について
http://www.jeita.or.jp/japanese/anzen/television/index.html

さて、テレビの取扱説明書を見ると、1年に1度は点検、内部の掃除を、そして5年に1度は販売店かメーカーに有料点検を依頼してください、と書かれていました(ソニーのテレビ)。国産にかぎらず、LGのテレビにも1年に1度点検を、という記載がありました。

テレビの点検。テレビってメンテナンスフリーだと思っていませんでしたか?
果たして、テレビの有料点検を行ったことがある、という人に出会ったことがありません。 もちろん自分もやったことがありません。

なお、ブラウン管のテレビは、コンセントを抜いてもしばらく帯電しています。うかつに内部の掃除をすると危険ですよ! ということで、テレビ安全週間のお知らせでした(?)。

テレビが危険?

日本では、1953(昭和28)年にテレビ放送が始まり、1960(昭和35)年にはカラー放送が開始されました。初のカラーテレビは17インチで42万円。当時は大卒初任給が1万円少々、という時代ですから、とんでもない金額です。
しかし給料が上がり続ける時代でもあり、カラーテレビは爆発的に普及し、価格も下がって1973年には白黒テレビとシェアが逆転します。

カラーテレビの一般世帯普及率は、1973年に75.8%、翌74年に85.9%、そして75年に90.3%に達します。84年には99.2%と、ほぼ100%水準となり、以降、2013年までこの状態が続きます。
この数値が、今年3月の調査では96.5%になりました。

「うわ、テレビ普及の危機か…」というのは少々早合点で、実は2014年調査分から、ブラウン管テレビが調査対象外になっているため、ブラウン管テレビしかない世帯にはテレビがない、というカウントになっているのです。薄型テレビの普及率は、2013年は96.4%でしたから、ごくわずかながら、薄型テレビの普及は進んでいる、という調査結果です。

シャープ 70V型 液晶 テレビ AQUOS LC-70UD20 4K 2014年モデル

ところで、薄型テレビの普及は、実はブラウン管型カラーテレビが普及した時と同様に急速に進みました。
ブラウン管と薄型が分けて調査されるようになったのは2005年からと比較的新しく、このとき薄型テレビの普及率は11.5%でした。これが95%を超える(2012年)まで、7年でした。
ブラウン管型カラーテレビは、13.9%の普及率だった1969年から、95.4%の1977年までに8年かかっています。
下のグラフは、テレビの普及率の推移です。カラーテレビの当初のカーブと、薄型テレビの描いたカーブはほぼ同様です。

テレビ普及率

内閣府 消費動向調査より
http://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/shouhi/shouhi.html

ブラウン管型テレビには「カラー放送の実施」という牽引があり、薄型テレビには「地上デジタル化」という切り替え策がありました。どちらにしても、10年もたたないうちに、「リビングの主役」が入れ替わる結果になったのです。

薄型テレビの大型化はめざましく、いまメーカーが力を入れている4Kテレビには、85型、という巨大なものまであらわれました。

薄型テレビの登場は確実にリビングのプランニングに影響します。10年前、85型のテレビを置く前提でつくられた家など皆無でしょう。10年後、いったいテレビはどこまで大きくなっているのか、見当がつきません。
壁掛けテレビ
一方で、若年層の一人暮らしを中心に、いわゆる「若者のテレビ離れ」が進んでいます。
NHK放送文化研究所が5年ごとに行っている調査では、テレビの視聴時間、テレビを見る率ともに、50代以上と20代以下では顕著に差がでています。
テレビに関する生活調査表

テレビ視聴時間の分布をみても、0分、つまりテレビを見ないという割合は、1995年の8%から、5年ごとに1%ずつ増えています(もっとも、5時間以上、という人も増えているのですが)。

テレビ視聴時間の分布図

NHK放送文化研究所「2010年国民生活時間調査報告書」より
http://www.nhk.or.jp/bunken/summary/yoron/lifetime/pdf/110223.pdf

たしかに、テレビは少しずつながら「危険」に近づいているのかもしれません、事業者側からすれば。

テレビは大きくなる? 見られなくなる?

良くも悪くも、様式は、一つ前の世代のものがフォーマルになる、という傾向があります。筆から万年筆へ、万年筆からボールペンへ、ボールペン(手書き)からパソコンの文字へ、という具合に。

「テレビ離れ」が言われる一方で、かつて一家に一台だったテレビは、一部屋に一台、の時代にもなりました。ワンセグ・フルセグがスマートフォンで見られるようになり、一家がそろって同じテレビ受像機を見る、という構図は、「一世代前のフォーマル」になっているのかもしれません。

大きなテレビがありながら、家族はみんなスマートフォンの画面に夢中。あれ、ドキッとした人、いませんか?

10年前には、こんなスタイル、誰も想像できていませんでした。「びお」では、たびたび「住宅には6つのSの層がある」というスチュワート・ブランドの言葉を紹介しています。

住宅には6つのSの層がある

この図は、Whole Earth Catalogの編集および制作者、スチュアート・ブランド(Stewart Brand、1938年12月14日 – アメリカ合衆国の作家、編集者。イリノイ州ロックフォード生まれ)の「建築はいかにして学ぶかー建てられたあとで何が起きるか」の挿絵です。
図中の文字の傾きはスピードを、線の太さは堅固さを表しています。


テレビがあるのは「SERVICE」の層。その寿命・堅牢さは家の躯体「STRUCTURE」には、本来遠く及ばないのです。ところが、家を建て替えたい、という要求の多くが、キッチンやお風呂といった「SERVICE」に不満が出てきたときでもあります。テレビは直接的な動機になりえないとしても、「SERVICE」や「SPACE PLAN」の変化は、「STRUCTURE」より早くて当たり前。ところが、まとめてスクラップアンドビルド、というのがこれまでの日本の家の主流でした。しかし、もう社会情勢がそれを許さなくなってきました。

スケルトンとインフィルの分離を、もしかしたらテレビの大型化が加速させてくれるかも、というのは飛躍しすぎでしょうけれど、100インチのテレビも収まるけれど、テレビのない暮らしにも対応できる、そんな変化が出来る家っていいでしょう?

※リニューアルする前の住まいマガジンびおから珠玉記事を再掲載しました。
(2014年05月26日の過去記事より再掲載)