「ていねいな暮らし」カタログ

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「食」のプロセスを知る——『PERMANENT』

前回は「食べること」をテーマに据えたリトルプレス『PERMANENT』の語り口に着目しました。東日本大震災以降「食べること」に強い関心を持ち、「普通の人の食卓の風景1」や街角にあるカフェなど、日常に根ざした「食」を紹介している冊子です。食をテーマにしたリトルプレスは多くありますが、『PERMANENT』が興味深いのは前回紹介した「文体」とともに、「食」のプロセスを共有しようとする姿勢にあると思います。

私自身は、『PERMANENT』刊行当初から本屋で見つけては購入し読んできましたが、中でもNo.6で取り上げられた鶏をさばくプロセスが特集された号には驚きました。今でこそ、ジビエの盛り上がりもあり、野生動物の解体に関する雑誌の特集や体験本・ウェブサイトなど多く見られるようになりましたが、リトルプレスの中でこういったものが特集されることは私の知る限りなかったと思います。専門家の手ほどきを受けながら、鶏を絞めるさま、血の滴るさまなどが写真とともに紹介されます。最後は、スープをとって骨の髄までいただくことを伝えています。

私たちは毎日のように肉を料理し食べているわけですから、動物の姿が解体され、食膳として並ぶことは当然のことであるのですが、このページを見て「驚いた」ということは、普段どれだけ「食」のプロセスへの想像を抜きにして過ごしているかがわかります。本号は私のメディアに関する大学の授業でも紹介していまして、毎年何人かの受講生が興味を持って借りにきていることからもこのことは明らかだと思います。

このように、「食」のプロセスを伝えてきた『PERMANENT』ですが、誌面上だけでなく、ワークショップという形で「食」のプロセスを共有する機会を作っているようです2。残念ながら私は参加したことがないのですが、紙冊子を作ることから始まり、ともに考える場を作るところまで、あらゆるメディアを横断し、ゆるやかに続けられていくこともまたリトルプレスの中ではあまり見られないことであるので、今後どのような展開が見られるのかに注目しています。

(1)『PERMANENT』 No.1 Winter 2013 p.30.
(2)食のリトルプレス『PERMANENT』を発行するサダマツシンジさん・千歌さん|「colocal コロカル」ローカルを学ぶ・暮らす・旅する 2019年1月9日参照.
https://colocal.jp/topics/lifestyle/people/20151120_57459.html

著者について

阿部純

阿部純あべ・じゅん
1982年東京生まれ。福山大学人間文化学部メディア・映像学科准教授。東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。専門はメディア文化史。研究対象は、墓に始まり、いまは各地のzineをあさりながらのライフスタイル研究を進める。共著に『現代メディア・イベント論―パブリック・ビューイングからゲーム実況まで』、『文化人とは何か?』など。地元尾道では『AIR zine』という小さな冊子を発行。

連載について

阿部さんは以前、メディア論の視点からお墓について研究していたそうです。そこへ、仕事の都合で東京から尾道へ引っ越した頃から、自身の暮らしぶりや、地域ごとに「ていねいな暮らし」を伝える「地域文化誌」に関心をもつようになったと言います。たしかに、巷で見かける大手の雑誌も、地方で見かける小さな冊子でも、同じようなイメージの暮らしが伝えらえています。それはなぜでしょう。そんな疑問に阿部さんは“ていねいに”向き合っています。