「ていねいな暮らし」カタログ

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「心とカラダ」に関すること
——『Lingkaran』

前回は『Lingkaran』において、マスメディアの著名人たちがこだわりの生活のあれこれを体験することを通して、暮らし方が提案される方法をみてきました。今回は、『Lingkaran』の副題としてある「心とカラダにやさしい生活」の部分に着目してみます。

これまで本連載で紹介してきた雑誌は暮らしのハウツーを伝えるものが多かったですが、『Lingkaran』ではその「生活」に「心とカラダ」という見えないものが含まれてきます。前回紹介した体験記事には、料理や裁縫といった暮らしの作る部分に関する事がらだけでなく、ホメオパシーやアーユルヴェーダ、音楽療法といった体の内面に目を向けた体験記事が多いことも大事な点だと思います。療法士との対話形式で「診療」の様子が伝えられ、介抱を受けている著名人たちの「あー、怖いくらいに(自分の症状と)当たってる」というような発言が、何か貴重な体の秘密が伝えられているように見えてしまう。身近な自分の体こそ、目に見えずにないがしろにされがちだったということに気づかされるのです。これらの体験は、お金がかかることも多いですから、体験したくとも二の足を踏むということもあるかと思います。現に本誌の読者ページにも、興味があったけれど試せていなかった「療法」の紹介に喜んでいる様子も伺うことができます1

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その後も、『Lingkaran』では結婚や子ども、子宮といったテーマのようになかなか本音で語り合いにくいものについて、体の「内側」からも迫っていくような記事が組まれています。これらの効能については個人差があるので明快に語ることはできないですが、『Lingkaran』読者の大きな関心の一つと言えますし、暮らし系雑誌が取り上げる話題の一つの柱と言うこともできると思います。

本誌は、文字の印刷に植物性大豆インキを使うなど、環境問題やエコ活動、リサイクルの方法についてもさまざまな活動が紹介されました。「心とカラダ」は、自分自身の中で完結するものではなく、環境との「輪=Lingkaran」のなかで形成されるものであり、この循環を体の内側と外側といったあらゆる方向から問い直すことを『Lingkaran』は目指していたようです。

(1)『Lingkaran』は読者の投稿ページが盛んなことも特徴だと思います。各号の感想を伝えあうだけでなく、自分たちが生活の中で実践していること・してみたいことについて共有する場になっていました。



阿部純  あべ・じゅん

1982年東京生まれ。福山大学人間文化学部メディア・映像学科講師。東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。専門はメディア文化史。研究対象は、墓に始まり、いまは各地のzineをあさりながらのライフスタイル研究を進める。共著に『現代メディア・イベント論―パブリック・ビューイングからゲーム実況まで』、『文化人とは何か?』など。地元尾道では『AIR zine』という小さな冊子を発行。

連載について

阿部さんは以前、メディア論の視点からお墓について研究していたそうです。そこへ、仕事の都合で東京から尾道へ引っ越した頃から、自身の暮らしぶりや、地域ごとに「ていねいな暮らし」を伝える「地域文化誌」に関心をもつようになったと言います。たしかに、巷で見かける大手の雑誌も、地方で見かける小さな冊子でも、同じようなイメージの暮らしが伝えらえています。それはなぜでしょう。そんな疑問に阿部さんは“ていねいに”向き合っています。