森里海から「あののぉ」

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コバノミツバツツジ

讃岐

里山に点在して咲くコバノミツバツツジの様子(詫間町・加嶺峠)

4月、桜が終わるころ讃岐の山を彩りはじめるのがコバノミツバツツジ。小さな紅紫色の花をつけるこの樹は、讃岐のおむすび山に点在して讃岐の風景をつくります。ソメイヨシノではなく、ヤマザクラが3月の後半から4月にかけて讃岐の里山を彩るのを第一弾の春とすれば、コバノミツバツツジは讃岐の春の第二弾の風景を形成する花ですね。山あいに点々と咲くので、地元では「ヤマツツジ」と呼ぶことも多いのですが、実際にはヤマツツジは5月頃に花を付ける別の種類のツツジです。讃岐の春を象徴するツツジは、やはりこのコバノミツバツツジだといえます。名前の由来は「小葉の三つ葉つつじ」と書く言葉そのもの。三つ葉つつじのうち特別葉の小さい種で、桜と同様新芽が出る寸前に開花するため、花が一面に咲き乱れ美しい光景を醸し出します。

コバノミツバツツジは讃岐に特別ゆかりのある花というわけではなく、西日本の日当たりの良い赤松などの二次林に多く見られるツツジです。しかしながら、おむすび山と呼ばれる里山が各地に点在する讃岐平野には実によく似合う花だと思うのです。おむすび山、ため池、そしてベーハ小屋や出水……讃岐の特徴的な風景はこれらが各地に点在することです。かつてベーハ小屋があちこちにある風景を、継時的に場面が展開し小説のようにストーリーが組み立てられることに似ているとして、「点在という街並み」と呼んだことがあります。このように「群生」ではなく「点在」がつくる風景こそが讃岐らしい風景だと私は思うのです。

コバノミツバツツジも讃岐の里山に点在して山を彩ることが多いのですね。そういう意味でも讃岐らしい風景といえるのではないでしょうか。讃岐の里山の春の風景をつくるコバノミツバツツジ、この春是非注目してみてください……。

※ 本連載は、菅組が発行する季刊誌『あののぉ』で著者が連載している内容を転載しています。


菅徹夫

菅徹夫  すが・てつお

1961年香川県仁尾町生まれ。神戸大学工学部建築学科を卒業後、同大学院修士課程にて西洋建築史専攻(向井正也研究室)。5年間、東京の中堅ゼネコン設計部で勤務したのち1990年に香川にUターン。現在は株式会社菅組 代表取締役社長。仕事の傍ら「ベーハ小屋研究会」を立ち上げるなど、地域資源の発掘などのユニークな活動も行う。
一級建築士、ビオトープ管理士