特集
びおハウスMの誕生(前編)
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私たちが住む日本列島は、地形や高度、大気や海流などの影響を受けることにより、気候が微細に入り組んでいます。例えば太陽は、同じ地域でも場所によって日射量や日照時間、気温や太陽光の入射角度などが微妙に異なるように、雨・風・雪・台風・雷・竜巻等の影響も、場所によって同じく差があります。そして、これらの要素をもとに気候を分類していくと、その量や質に違いがあり、それは相当な数にのぼることが分かってきています。
はじめに、こうした数多くの気候を見据えることで、実は日本の民家形態や集落をつくり上げてきたということを、先人たちの仕事を通して振り返ってみたいと思います。
日本の民家から学ぶ
高知県宿毛市(参考:宿毛市立宿毛歴史館)
四国地方に見られる「切妻屋根」の集落です。台風の通り道になることから、海に面した側は壁を多くし、風で屋根が飛ばされるのを防ぐため、ほとんどの民家が三角形の面(妻面と呼ぶ)をこちらへ向けて建っています。窓が少ないのは冬の強い季節風を避けるためですが、自然に逆らわない形態が美しい集落を形成している事例のひとつです。
日本の民家の特徴とは
日本各地の民家を訪ねてみると、そこには気候条件から必然的に生まれてきた形態があるということに、あらためて気付かされます。夏の暑い陽射しを遮り、冬の寒い季節風を避け、雨や雪から家を守るということを、あまり無理をせずに自然に対して向き合ってきた結果が、日本の建築文化を育んできたのだと思います。ただ、外見だけ見つめていても、もっと本質的なものが見えてこないのも事実です。次は、暮らしそのものから生まれたデザインについて、主なものだけにスポットを当て、少し掘り下げてみたいと思います。
1.屋根のかたち
屋根の多くは、昔から地産地消の考えが、即ち材の選定に結びついていたように思います。藁、茅、草、板、樹皮、石などを用い、雨漏りがしない屋根勾配と夏の暑さを防ぐ目的から、おそらく屋根材の厚さを決めていたはずです。
一方で、家のメンテナンスと材の寿命を考えながら、日常では次世代に受け継ぐための草木を大切に育てていたことも忘れてはなりません。
暮らしの面では、囲炉裏から舞い上がる煙を家の中に充満させない工夫や、養蚕のためのスペースの確保をするために、様々な屋根のかたちが生まれました。最も単純な屋根のひとつに、切妻造り(岐阜県白川郷、長野県奈良井宿)が挙げられます。町家や山間部に多く見られるこの屋根は、地域によって勾配の違いが見られ、使われる材料も多様であることから、デザインのバリエーションが普及していきました。

岐阜県白川郷

長野県奈良井宿
2.卯建(うだつ)
3.煙出し(天窓)
4.軒内

京都府嵐山
5.格子
古くは、屋内と外界を隔てる意味の『隔子』と呼ばれていたのが、今でもよく見かける格子です。本来は、家の前を通る人の視線を遮ったり、桟の間から太陽の光を取り入れたり、窓を開けて風を通したりするのが目的でしたが、現在は、防犯のために設けることが多くなったように思います。視線を気にせず、適度な光の中で、心地良い風を受けながら、リズミカルな美しい格子を眺めてみるのも、至福のひと時ではないでしょうか。自分の世界に浸ることができる格子(長野県妻籠宿)を、もう一度見直してみたいものです。

長野県妻籠宿
6.地窓・高窓
びおハウスMの原点は日本の民家
これまで見てきたように、日本の民家は地域の気候を読み込んだ結果としての形態に、生活の知恵としてのデザインを加えたものを、各地域に生んできました。それが、日本特有の美意識によってひとつの集落をつくり、建築を文化として昇華してきたように思います。旅先で古い町並みを散策したり、古建築を訪ねたりするのは、日本人の心の奥底にある古美(ふるび)ることへの郷愁が呼び覚まされるからなのではないでしょうか。
いつの頃からか、マイホームだけは自分の思うままに建てたいという建主の要望に対し、それをそのまま叶えることがプロの仕事だと勘違いしているつくり手を多く見かけるようになりました。景観を無視した派手な外観、目を覆いたくなるような色彩、どこかの国を真似したような家等が、日本の町を埋め尽くそうとしています。ほんの少しでも、自分の家がその町をつくり、しいてはそれが社会資産のひとつであるという認識があれば、このような結果にならなかったのではないでしょうか。
私は、これまでの日本の民家に見られた自然との応答技術を、新しい解釈と現代の製品を用いることによって、上質かつスタイリッシュなモダンデザインハウスをつくりあげました。人間の五感を刺激する現代民家、それがびおハウスMなのです。次回は、その詳細について説明をさせていただきたいと思いますので、乞うご期待を!

びおハウスMの外観(模型写真)
関連リンク
びおハウスについて (村松篤設計事務所HP掲載)
http://www2.wbs.ne.jp/~muratoku/bio-m01.htm
〝びおハウスM〟誕生! (篤噺しー村松篤設計事務所の所長ブログ掲載)
http://muratoku.exblog.jp/16388644/
1959年静岡県生まれ。建築家。OMソーラー協会設立に参加。同協会取締役設計部長を経て、1996年に村松篤設計事務所設立、現在に至る。地元の杉材を使用し、塗り壁と和紙で仕上げられた住宅で、日本建築学会東海賞を受賞。2007年に日本のスタンダード住宅「Bio森の家」を実現、今年は新しい上質なモダンデザインハウス「びおハウスM」を始動、現在展開中。
掲載写真
福井県板取宿:紫煙(クリエイティブ・コモンズ 表示 – 継承 3.0 Unported (CC BY-SA 3.0) )
長野県海野宿:大友ディミトリ(クリエイティブ・コモンズ 表示 – 継承 3.0 Unported (CC BY-SA 3.0) )
青森県弘前市:user:opqr(クリエイティブ・コモンズ 表示 – 継承 3.0 Unported (CC BY-SA 3.0) )
山形県田麦俣:フォトライブラリー














2011/11/19(土)10:59
鳥人さん
コメントありがとうございます。失礼しました。修正いたしました。
2011/11/19(土)10:57
智頭は鳥取県です。