F・LL・ライトに学ぶ
ヴィンテージな家づくり

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2階建てのユーソニアンハウス
Pew邸(1938)

John C.Pew house

Pew邸は森に囲まれた湖岸の斜面に建っています。敷地幅が限られていたためユーソニアンハウスでは数少ない2階建です。斜面に石積みの基部を造り木造部分を湖側にはり出させて眺望とプライバシーを確保しています。湖畔の外周道路から湖に向かってアプローチを下り、湖をちらっと見て家に入ります。
玄関に入ると大きなテラスに面した居間が見えます。開口部は天井まで大きく開けられ、大きなテラスに出ると湖が望めます。木々に囲まれているため、近くにあるはずの隣家には気がつきません。

lake mendota


入り口からの居間を見る。左手のテラスからメンドータ湖が見下ろせる。

居間の中央部は、天井が一段高く大きな石積みの暖炉のある落ち着くスペースです。右側に回り込むとダイニングコーナー、さらに右に回るとキッチンがあり玄関につながります。ぐるっと一廻りできる実用的で使いやすいプランです。
壁と天井はサイプレス(糸杉材)、暖炉はライムストーン(石灰石)です。自然素材は経年変化によって風合いが増し、古びたみすぼらしさがまったくありません。

Pew House (1937) – Frank Lloyd Wright

暖炉の右が玄関、左がダイニングコーナー。暖炉の裏側に階段とキッチンがある。

玄関から暖炉とキチンに挟まれた階段を降りるとボイラー室と洗濯室。反対のダイニング側から階段を上がると3つの寝室とバスルームがあります。この家が設計されたのは昭和15年。80年も前ですが、現在でもそのまま通用する時代を先取りした平面計画ですね。

Pew House (1937) – Frank Lloyd Wright

平面図

施工はタリアセンフェローシップによる直営工事です。監督にあったったのはW.ピータース。タリアセンの学生でした。まだ経験も少なく予算的にもかなり苦労したようです。彼はライトの後を引き継いでタリアセンのリーダーになりました。
当初、ダイニングからカーポートに出られる案もあったそうですが、夫人がライトに要望を出し現在のプランになったそうです。

 

著者について

半田雅俊

半田雅俊はんだ・まさとし
1950年生まれ。1973年工学院大学建築学科卒業。遠藤楽建築創作所勤務の後、1981~83年 F.LL.ライトの建築学校・設計事務所『タリアセン』在籍。ライトの住宅100棟以上を訪ね歩く。1983年半田雅俊設計事務所設立。NPO法人家づくりの会理事 。少ないエネルギーで快適に暮らせる、地域の気候風土にあった家「びおハウスH」開発者。