森里海の色
柿木村の一輪挿し
「ツユクサ」

露草 つゆくさ

天地始粛の候、ようやく暑さが鎮まってきたような気がする辺境。
田んぼの稲穂がそろそろ黄ばんできてその上をアカネが飛び回っている。

朝の散歩も川風が頬を撫でて気持ちいい。
緑色の草むらの中に露草の鮮やかな青が目を惹いた。
朝露に濡れたその青は一段と爽やかさと涼を感じさせてくれる。

万葉の時代から親しまれたという花姿や色合いは日本人の繊細な感性の琴線に触れるのだろう。
よく見ると二枚の青い花弁の下に一枚の白い小さな花弁が付いている。
その姿は小さな妖精のようにも見える。

染色の材料にも使われるというその青を水に溶かして旅のスケッチノートの彩色に使うことが出来たらいいだろうなと思う。

駆け足の旅が多いのでそんな旅が出来たらさぞかし仕合わせに思えるだろうに。

著者について

田村浩一

田村浩一たむら・ひろかず
建築
1954年生まれ。株式会社リンケン代表取締役。中国山脈の辺境の地で、美しい森や川や棚田に囲まれながら木と建築の仕事を展開。山野辺の四季の移ろいを感じながら、酒を愛し、野の花を愛で、暮らしに寄り添う棲家とは何かを考えながら生活している。一輪挿しはライフワークのひとつ。