森里海の色
柿木村の一輪挿し「スノードロップ」

待雪草、松雪草

和名を待雪草と言う。
この時節、春を待つなら分かるけど雪を待つとは奇異なり。

昨秋、裏庭に植えた球根がこの冬の厳しさに耐え抜いて天使のような花を咲かせてくれた。

名前の如く雪の雫のように透き通った白い色は可憐で思わず口に含みたい衝動に駆られる。
楚々とした形をそのまま活けたいと思い白磁の小さなピッチャーに容れた。

かつて、この裏庭の主人は白い庭を作ろうと思い数々の白い花が咲く苗や球根を植えた。
三月から五月に掛けて見事な白い庭が楽しめた。

二月の雪、三月の風、四月の雨が美しい五月を連れてくる。

古くからの英国そして日本の天気俚諺は真理ですね。

著者について

田村浩一

田村浩一たむら・ひろかず
建築
1954年生まれ。株式会社リンケン代表取締役。中国山脈の辺境の地で、美しい森や川や棚田に囲まれながら木と建築の仕事を展開。山野辺の四季の移ろいを感じながら、酒を愛し、野の花を愛で、暮らしに寄り添う棲家とは何かを考えながら生活している。一輪挿しはライフワークのひとつ。