森里海の色
柿木村の一輪挿し「リキュウバイ」

梅花下野

僕の大好きな花が花開いた。

裏庭のリキュウバイがこのところの陽気と暖かな雨で一気に開花したのだ。

雨の日の涙のような雫を湛えた風情も美しいし、
晴れた日の目に眩い白さは鮮烈でもある。

細身の枝先に付いた純白の薄い花弁が風に揺らぐ姿は清潔な薄着を纏った女性を思わせる。
今頃、街では春色のシフォンワンピース姿が風に舞っているのだろうね。

そして山はいよいよ新緑が萌え始めた。濃い緑と淡い緑のグラデュエーションがとても綺麗だ。ところどころ残雪のように白く見えるのはコブシの花。

山が笑っている。

著者について

田村浩一

田村浩一たむら・ひろかず
建築
1954年生まれ。株式会社リンケン代表取締役。中国山脈の辺境の地で、美しい森や川や棚田に囲まれながら木と建築の仕事を展開。山野辺の四季の移ろいを感じながら、酒を愛し、野の花を愛で、暮らしに寄り添う棲家とは何かを考えながら生活している。一輪挿しはライフワークのひとつ。