森里海の色
柿木村の一輪挿し「ナンテン」

南天の實

南天の木は「難を転ずる」という言い伝えでどこの家にも鬼門や裏鬼門に植えられているのを見かける。
我が家の玄関脇の植え込みに白、縁側先には赤い南天の実が色鮮やかに生っていた。
その紅白の実をガラスの器に一緒に挿すと辺りがぱーっと華やかになり新年を迎えるお目出度さ気分が一層となった。
近所の幼子たちは雪が積もると真っ先に雪だるまを作るのが楽しみらしい。
家の中に有る野菜や炭を持ち出して来て鼻や目を付けている。
子供のころ作った雪ウサギの目には南天の赤い実、耳は青い葉がお定まりだった。
遠い日を懐かしみながら往く年、来る年の事を考えるのだ。

著者について

田村浩一

田村浩一たむら・ひろかず
建築
1954年生まれ。株式会社リンケン代表取締役。中国山脈の辺境の地で、美しい森や川や棚田に囲まれながら木と建築の仕事を展開。山野辺の四季の移ろいを感じながら、酒を愛し、野の花を愛で、暮らしに寄り添う棲家とは何かを考えながら生活している。一輪挿しはライフワークのひとつ。