森里海の色
柿木村の一輪挿し「ムクゲ」

木槿 むくげ
日本の各地に甚大な被害をもたらした梅雨が明けると手のひら返しのように一気に暑い夏がやってきた。

これから先、日本という国はいったいどのようになっていくのだろうという素朴な疑問を禁じ得ない。

特に局地的な未曽有の降雨は温暖化の影響という識者もいるし、日本の山の構造的な問題が事態を深刻にしているという見方もある。繰り返される悲劇に言葉もない。

地震国であり台風の通り道であり地理的に抱えた宿命とはいえ、毎年のようにこんなにも多数の命が奪われなくてはならないのかという不条理に心がざわめくのだ。

皮肉めいた青空の覗く一日、裏庭の木槿の花が一斉に花開いた。

風に揺れる紫色の花弁はどこか仏の風情が漂い、死者たちへの弔いの彩に感じられた。

暑く長い夏をやり過ごさなくてはならない。

著者について

田村浩一

田村浩一たむら・ひろかず
建築
1954年生まれ。株式会社リンケン代表取締役。中国山脈の辺境の地で、美しい森や川や棚田に囲まれながら木と建築の仕事を展開。山野辺の四季の移ろいを感じながら、酒を愛し、野の花を愛で、暮らしに寄り添う棲家とは何かを考えながら生活している。一輪挿しはライフワークのひとつ。