森里海の色
柿木村の一輪挿し「キチジョウソウ」

吉祥草

ランのようなすーとした葉の間に小さな花弁が顔を覗かせている吉祥草。
この花が咲くと良いことがあるのらしい。
吉祥は吉兆でもあるのだ。
残り少ない年の瀬に来し方を省み、やっぱり泣き笑いの一年だったなあと思う。
完璧を求めながらも完璧な人生なんてあるわきゃないさと嘯いてみる。
幾つになっても転がりながら何かを追い求めるのが人生なんだろう。
その何かが何かは判らないけれど……。

風のようにたださらさらと
花のようにただきらきらと
日々是好日

好きな詩人の一節が頭を巡った。
来年こそはきっと良いことが有ればいいなと花を眺めながら想った。

著者について

田村浩一

田村浩一たむら・ひろかず
建築
1954年生まれ。株式会社リンケン代表取締役。中国山脈の辺境の地で、美しい森や川や棚田に囲まれながら木と建築の仕事を展開。山野辺の四季の移ろいを感じながら、酒を愛し、野の花を愛で、暮らしに寄り添う棲家とは何かを考えながら生活している。一輪挿しはライフワークのひとつ。