森里海の色
柿木村の一輪挿し
「ヒメウツギ」

姫卯木、卯の花

白い花が次々と咲く裏庭。
二月の雪、三月の風、四月の雨が美しい五月を連れてくる。

姫空木の花が可憐に咲いている。
この花が咲くと、吹く風ももう初夏の匂いだ。

遥か昔、何故かギンガムチェックの夏服の似合う人が好いと思った。
H・カミンスキーの上質なラフィア素材のつば広帽子も似合っていた。
日焼けを気にしてかいつも目深に被っていた。

月日は流れる。
久々に街に出かけると降り注ぐ陽光の中を闊歩する夏服姿を眺めていると
アーウイン・ショーの小説を思い起こした。

夏服の女たちは白い花のように凛として颯爽として眩い。

著者について

田村浩一

田村浩一たむら・ひろかず
建築
1954年生まれ。株式会社リンケン代表取締役。中国山脈の辺境の地で、美しい森や川や棚田に囲まれながら木と建築の仕事を展開。山野辺の四季の移ろいを感じながら、酒を愛し、野の花を愛で、暮らしに寄り添う棲家とは何かを考えながら生活している。一輪挿しはライフワークのひとつ。