森里海の色
柿木村の一輪挿し
「ハクチョウソウ」

白蝶草 白鳥草 はくちょうそう

まるで悪意を持ったような台風が過ぎ去った。
自然が歪められているような気がする。
自然とは人の気持ちを癒し、和ませ、そして共生するもの。
無論、自然の厳しさを知らぬわけでもない。
それでも人々はその厳しさを受け入れながら呼応しながら生きてきた。

今、その自然が邪悪な意思を抱き始めているような気がしてならない。
僕らは知らずのうちに自然を怒らせていたのだろう。

それでも暑い日差しの中で白い花が咲いていた。

ハクチョウソウはその白い花姿から白鳥草とも白蝶草とも呼ばれている。
小さな花からは飛ぶ蝶の姿の方が似合っている。

照りつける陽の下でひらひらと舞う姿が涼を運んでくれるようだ。

変哲もないガラス瓶に挿してみた。
化粧っ気のない素っぴんの涼やかな花だからそれが似合うと思った。

著者について

田村浩一

田村浩一たむら・ひろかず
建築
1954年生まれ。株式会社リンケン代表取締役。中国山脈の辺境の地で、美しい森や川や棚田に囲まれながら木と建築の仕事を展開。山野辺の四季の移ろいを感じながら、酒を愛し、野の花を愛で、暮らしに寄り添う棲家とは何かを考えながら生活している。一輪挿しはライフワークのひとつ。