森里海の色
柿木村の一輪挿し「ギボウシ」

ぎぼうし 擬宝珠
裏庭の山水が落ちる水辺は草花たちの格好の場所。
夏の強い日差しも直には当たらずいつも涼しげな風がそよいでいる。

ギボウシは春には若芽を採ってお浸しを作ったり、広めの葉っぱはお刺身の下に敷いて料理の脇役として結構我が家では重宝している花なのだ。
勿論、料理にひとひらの花を飾っても良い。
薄紫色で清楚な花姿は主張せず言葉少なで好感が持てる。

梅雨明け前の台風が強い風と雨を運んできた。
細い茎にすっと咲いた花が右に左に揺られながらも必死に耐えようとしていた。

この台風が過ぎ去ると辺境もいよいよ夏本番となるのだろう。

虎彦のように懐手して台風一過の澄んだ星空を見上げ、
牽牛と織姫の年に一度の逢瀬がちゃんと成就できますようにと童心になって祈ってみよう。

著者について

田村浩一

田村浩一たむら・ひろかず
建築
1954年生まれ。株式会社リンケン代表取締役。中国山脈の辺境の地で、美しい森や川や棚田に囲まれながら木と建築の仕事を展開。山野辺の四季の移ろいを感じながら、酒を愛し、野の花を愛で、暮らしに寄り添う棲家とは何かを考えながら生活している。一輪挿しはライフワークのひとつ。