展示『LES ROUTES DU FUTUR DU GRAND PARIS』

ところかわれば

森弘子

以前の記事でもご紹介した、フランス・パリのセーヌ川沿いにある、PAVILION de l’ARSENAL。パリの建築や都市計画に関する情報や書籍が集まり、展示やさまざまなイベントが行われている空間です。
2019年6月から行われている企画展『LES ROUTES DU FUTUR DU GRAND PARIS』(グラン・パリの未来の道路)。GRAND PARIS(グラン・パリ)はパリ市とその周辺部を結びつけ、より大きな都市圏にする計画のこと。展示では、グラン・パリの交通を改善し、汚染を減らし、そして周囲の環境をよりよくつないでいくためにどのような変革をすべきか、というテーマで、グラン・パリの交通網の歴史と将来像を、映像やパネルを使いボリュームたっぷりに解説しています。

PAVILION de l’ARSENALの2階(フランス式1階)では、建築家、都市計画者、ランドスケープ・アーキテクト、そして環境、交通分析の専門家等で構成される4つのチームによるプロジェクトが紹介されています。これらのプロジェクトは、主にPériphérique(パリ20区を囲む環状高速道路)、その外環のパリ外環道A86号線、さらに大きなFrancilienn環状道路、その他の主要道路を含む約1,000キロメートルにおよぶ既存のネットワークに対するものです。

グラン・パリ フランス 

グラン・パリの道路の変遷を示したこの企画展のために特別に作成された一連のマップ。きれいにまとまっていて見やすく理解しやすい。

見所は、この企画展示をよりよく理解するための約20の映像。映像では、1935年の最初の高速道路の建設など貴重な映像をはじめとし、グラン・パリの道路の歴史と用途を説明しています。フランス語がわからなくても、貴重な映像が興味深いので十分に楽しめます。

グラン・パリ フランス 

展示会場には映像展示がたくさん。19世紀終わりのパリの道路の様子を映した映像やグラン・パリ計画についてわかりやすく説明した映像も。

展示されているプロジェクトでは、鉄道、カーシェアリング、自転車、歩行者の動きなど、車以外の移動手段と公共交通システムを活かしていくために、どのように道路を作り直すことが可能か、ということをリサーチしています。リサーチに基づくアイデアは、わかりやすくビジュアライズされているので、理解しやすいですし、日本にも転用できそうなアイデアもいくつか見受けられました。

グラン・パリ フランス 

来訪者が意見を糸で残していける展示を前に、熱心に議論する二人組。

パリは現在、中心部から車をどんどん排除していき、環境改善をしていこうという動きがすでに行われています。一例ですが、年に数回、日曜日に環状線Périphériqueの内側(パリ20区内)を時間限定で車を交通規制する『Journée sans voiture』(ノーカーデー)が行われています。(11時から19時まで、緊急車両、バスは通行可) 道路交通網という一見専門的な内容にも見えますが、生活を支える動脈ともいえる交通は、都市に住む限りは切っても切り離せないもの。この展示では専門家だけでなく一般の人でも理解できるような工夫が随所に見受けられる展示になっています。

展示会場に訪れたのは日曜日の閉館間際でしたが、たくさんの人が映像を中心に熱心に見ていました。パリの住民のこのトピックに関する関心が高いことがうかがえます。夏休みにパリを訪れることがあれば是非立ち寄ってみて、自分の街と比較してみるのはいかがでしょうか?滞在の最後の方、パリの交通網をある程度把握してから訪れるのがおすすめです。

PAVILION de l’ARSENAL 『LES ROUTES DU FUTUR DU GRAND PARIS』
(英語)
[会期]2019年6月7日(木)〜2019年9月1日(日) 入場無料
[開館時間]月曜日を除く、11:00〜19:00
[アクセス]最寄りメトロ7番線 Sully-Morland駅 21, boulevard Morland 75004 Paris
[ウェブサイト]http://www.pavillon-arsenal.com/en/