それが証拠に、
世界最多の二輪車スーパーカブや、答え一発カシオミニや、「おしりだって洗ってほしい」ウォシュレットや、世界初の実用ハイブリッド車プリウスなどと並んで、戦後のプロダクトデザイン88に選ばれているのです。

BeVは、ビーヴィと読みます。
建築家秋山東一が仲間たちとつくりだした、
Be-h@us(ビーハウス)と、Volks(フォルクスハウス)を併せた略語です。
BeVスタンダードは、これら名作シリーズの発展のカタチです。
プロダクトデザイン88に選ばれたのは、プレハブリケーションとしての純度の高さが評価されてのことです。
秋山東一はどこに行っても、建物に目を注ぎ、目を止める。それがバラックだと身体のなかから歓びがこみ上げてくるようで、写真に撮り、コレクションにして愉しんでいる。なぜ、秋山東一はバラックにそんなに興味を持つのか。
そこに秋山東一は、建築の「素形」をみたいからではないか、とぼくは推理した。この「素形」という言葉は、内藤廣が用いた言葉である。趙海光は「建築家は人が用いた言葉を使うのはタブーだ」というが、秋山東一の場合、この「素形」という言葉が最も適切だと思う。
「素形」の対語は「異形」である。秋山東一にとっては、最近の住宅の方が異形であって、しかし彼は、意味不明な異形にはまるで興味を示さない。異形に異形を重ね着したような現代の住宅風景を、秋山東一は視界から消し去り、もっぱら素形へと目を向けるのである。それが氏にとってはバラックなのである。
問題は、そこから先にある。
氏が探査した素形を、現代住宅にどう止揚し得るのか。新しいスタンダード住宅として、それはカタチになるのか。
秋山東一は、フォルクスハウスの創造(1993年)において大きな実りをみせ、Be-h@us(2000年)において新世界へとたどり着き、これらの成果によって、氏は、スーパーカブ・カシオミニ・ウォシュレット・プリウスなどと並んで、この50年間に生まれた「ニッポンプロダクト88」に選ばれている。工業化住宅から一つ
も選ばれず、氏の設計を選んだ点に審査員の見識をみるのであるが、この住宅が持つ真の価値は、これに学んだ工務店が設計力を飛躍的に高めたことにあると、わたしはみている。
昨年、二社の工務店がグッドデザイン賞を受賞した。鹿児島には評判のシンケンがあり、山梨には小澤建築工房の建物がある。それらはみな、フォルクスハウスやBe-h@usの影響なしにはあり得なかった。ここ10年来、これという工務店はみなこれに学び、あるいはこれに反発することで、自己表現を得たのである。
設計は生きものである。学んだ、分かったと思ったという尻から、形骸化する。いつも鮮度を持つためには、自分を磨く場を持つことである。
BeVスタンダードを学ぶ学校は、そのための設計道場である。秋山東一の頭のなかに分け入り、原型に触れ、手順と作法を身につける場である。
そこから、新たなプレーヤー工務店が誕生することを願ってやまない。
スタンダードハウスの要諦は〈じかん〉デザイン
〈じかん〉が経つにつれて建物に何が起こるかを、事前に調べること!

秋山東一が「おもしろい」という本に、スチュワート・ブランドが書いた『建物はいかにして学ぶか――建てられたあと何が起きるか』という本がある。まだ訳本が出ていないが、その本にこんな記述がある。
「壁や天井の開口部を塞ぐ前にすべて写真を撮り、図面と組み合わせてバインダーに綴じ込み、一冊の本を作る。電気の配線や内装を担当する下請け業者たちはこの本を参照し、竣工時にはこの本を恭しく施主に贈呈する。彼は基礎工事や配管工事などについても同じ事をすることを推奨している。建物が古くなればなるほど、この本は貴重なものになる」
「建物を単に空間的な構造物としてとらえるのではなく、じかんという要素を考えに入れ、この世界に生まれ、様々な成長を遂げ、やがては死に至る存在としてとらえなおす必要がある」(訳/村松潔)
スチュワート・ブランドは、建物に6つの層を置き、その変化の速度を、それぞれの時間的尺度に応じた解決策をとる必要があるという。その6つとは、
1.敷地=SITE 2.構造=STRURE 3.外装=SKIN 4.外装=SKIN 5.空間設計=SPACE PLAN 6.家具調度=STUFF
である。
もとになるのは〈設計〉である
スチュワート・ブランドは、またこうもいう。
「成長し、成熟するためには、建物は長寿である必要があり、そのためには強靱な構造が不可欠である。最近では木材の軸組み構造が復活しているが、これは奨励すべきである。屋根はもちろん傾斜したほうがよく、できるだけ軒が深い方が壁を風雨や太陽から保護できる。壁は構造とは独立しているほうが保守管理が容易である」
秋山東一は、こういうスタンダード住宅をつくろうと試行錯誤し、悪戦苦闘してきたのであって、その意味では、時代がここにきて、少しばかり追いついてきたに過ぎない。
この本質を知ろうとしないで、ただ商業的に「200年住宅」をいうところとの差は歴然としている。

1942年、東京都生まれ。東京芸術大学美術学部建築科卒業。東孝光建築研究所を経て、1977年ランド計画研究所を設立。1994年にランドシップに解消する。木造軸組パネル工法のフォルクスAの開発に続き、Be-h@us、そして現在、さらなる進化のカタチ「Be V standard」開発への取り組みを進める。






コメントはこちらから!