森里海の色
木版画が彩る世界「ヤツデ」

庭木としてもよく使われるヤツデは、鳥にも人気で、種が広がりさまざまなところで見かけます。ヤツデというぐらいだから八つの葉、と思い込んでいませんか? でも葉をよく見ると…。


 

漢字では八手と書く。手のひらのようだ、ということだろうけど、五ではなく八だ。実のところ、ヤツデの葉は8つではなく9つに裂けている。でも九手ではなく、八手なのだ。

八という数字は「末広がり」として人気がある。中国でも「発」に通じるとして人気で、北京オリンピックは8月8日午後8時開始だし、キリスト教では、8はイエスの復活を意味する数字で、聖堂の多くは八角形だ。

ひるがえって九である。

日本の九は、忌み数である。病院には、四号室とならんで、九号室がない場合も多い。特売品の値段の末尾も、九ではなくて八である。
中国では、九も人気はあるものの、八が断然強い。ヤツデの中国名は「八角金盘」である。
学名は「Fatsia japonica」で、このFatsiaは「八」に由来するという。学名よ、お前もか。

かくして、ヤツデは八手になった。

「量」としてなら七と八には差があるが、「記号」としてであれば、どうでもいいのにな、と、僕などは思う。だが相手によっては、それがとても重要なことであることがある。もちろん逆のこともある。

ヤツデもまさか、そんなことの引き合いに出されるとは思わなかっただろう。このヤツデ、常緑樹としては珍しく、分裂葉を持つ植物なので、まずはその無二の風景を愉しむのが礼儀、としておこう。

文/佐塚昌則


たかだみつみ

たかだみつみ  たかだ・みつみ創作木版画家

新潟県長岡市生まれ。東京伝統木版画版元勤務を経て 現在、創作木版画家として活動中。また、イラストレーションやデザイン等も手掛ける。「身近なものを大切に愛おしんで丁寧に生きる。」をコンセプトに作品制作をしている。長岡造形大学 非常勤講師。