森里海の色
木版画が彩る世界「ヤマハギ」

秋の七草、というには気が早い気もしますが、暦の上ではもう秋、ハギの季節です。


 
二十四節気は処暑、「陽気とどまりて、初めて退きやまむとすれば也」とされる頃、つまり暑さが峠を越えて涼しくなる頃、のはずだけど、どう控えめに見ても暑い。エアコン室外機からの熱波でさらに暑い。秋はどこにいってしまったのだろう。

ハギは秋の七草の一つで、万葉集で詠われた花のなかで最も多い。梅の歌が多いイメージがあるが、それ以上にハギが多く詠われている、つまり古くはハギがしたしまれていた証左だろう。ハギの花見をする和歌もある。

けれど現代でハギに注目する人は少ない。報道やSNSにハギが出てくることはめったに無い(僕がハギに気を配っていないだけかもしれないが)

ハギは滅んだわけでもないのに、どうして下火になったのか。

ガーデニングに使わない(つまり売れないから?

有用植物としての価値がないから?

いや、そもそも目にする機会が少ないから、ではなかろうか。

ハギはパイオニア植物で、山火事や崩落などの、自然の撹乱で荒れ地になったところに生えてくる。開発中の住宅地なんかにも、ハギの仲間がよく生えている。ハギはマメ科で、根粒菌と矯正して痩せた土地でも育ち、そうして土を肥やすことで、後に続く植物が出てくる。まさにパイオニア。

万葉の頃は、治水や護岸が今とはぜんぜん違うから、自然撹乱はずっと多かったに違いない。当たり前に身の回りにあるものだから、歌にも詠まれてきたのだろう。

現代では、ハギがゆっくり荒れ地を豊かにするようなプロセスにつきあう余裕がなくなっている。
もうちょっと涼しかったら、ハギの花見もしてみたいなあ。

文/佐塚昌則