森里海の色
木版画が彩る世界「ヤブコウジ」

雪景色に映えるヤブコウジの実。寒さの中にも前向きなエネルギーがもらえる版画ですね。大寒、もっとも寒いと言われる時期がやってきました。


 
今年は暖冬と言われているが、それでもやはり冬らしい寒さを感じる日も幾日かあった。

寒さ、というテーマを取り上げるにあたって、住宅の省エネ義務化が見送られたことに触れたい。

当初、2020年から省エネ義務化が実施されるとされていたものが、「業界の反発もあって」延期の方向へ、という話になっている。

まるで断熱ができないから勘弁してくれ、というように捉えられているかもしれないが、そればかりではないと思う。

この基準のレベルは決して高くない。きちんと断熱をしている作り手は、より高いレベルで実現している。いっぽうで、この義務化に反対する人の中には、いまの性能評価には適合しないけれど、快適に暮らせる家を作れるではないか、という声もある。現に、この1月に訪問した、福岡の土壁の家は、空気集熱式ソーラーだけで十分な暖かさがあったし、聞けば猛暑だった夏も、エアコンなしでも快適に過ごせたという。

もちろん、これは敷地の条件、設計・施工力、住まい手の工夫などが多層的にあってなされたものであるが、こうして実現できるものを、別の基準で縛らないでほしい、という声は傾聴に値する。

話をあえて省エネ基準に戻すと、5000万戸といわれる日本の既存住宅のうち、現行の省エネ基準を満たすレベルの家は5%程度と推測されている。残り95%の家は、基準を満たさない寒い家、というのが統計上の見方だけれど、必ずしもそうでもないのである。

実は、先ほどの家は、古民家の改修をしたものだ。
もちろん、今回の例は稀有なものであって、多くは本当に暑く・寒い家だろう。だから、意識や技術のレベルが低いものを引き上げる施策は歓迎する。けれど、角を矯めて牛を殺す、ということにならないよう、花も実もある決着を望んでいる。

文/佐塚昌則