森里海の色
木版画が彩る世界「ススキ」

昼の長さと夜の長さが同じ、「秋分」を迎えました。秋の日は釣瓶落とし、ここから冬至に向けて、どんどん日が短くなっていきます。
今回の主役は「ススキ」、そして「イヌタデ」が脇を固めます。


 
同じ場所であっても、植物の群落は変化していく。これを植生遷移という。裸地がやがて草原になり、森林になっていく。裸地から陰樹の森林に遷移するまでは200年ほどかかるといわれている。ススキの草原は、草原としては最後の段階、森林の準備期間ともいえる。

ススキは別名「茅(かや)」とも呼ばれる。茅葺屋根の「茅」だ。ススキ草原が森林に遷移する前に、人が茅を刈っていたから、ススキ草原は、ススキ草原のままでいられたのだ。

そうした有用植物のススキに対して、イヌタデはどうだろうか。植物の名前に「イヌ」がつく場合、食べられないとか、転じて役に立たない、というような意味を持つものが多い。
「蓼食う虫も好き好き」という言葉があるように、タデは独特の刺激があって好みもあるのだろうが、そもそもイヌタデのほうは、食用にならない。

けれど、「アカマンマ」という別名を持っている。赤い粒上の果実を赤飯に見立てたもので、昔の子どもたちはこれでままごとをしたのだろう。長い目で見れば情操教育の役に立った、といえなくはないか。

かつての有用植物も、いまでは使われなくなったものがたくさんある。けれど、人間が直接食べたり材料や道具にしたり、というだけが植物の価値ではない。

そういう目で見れば、ススキもイヌタデも、他の植物も、ひとしく素晴らしいのだ。

文/佐塚昌則