森里海の色
木版画が彩る世界「スギナ・ツクシ」

啓蟄、虫が地面から出てくるとされる頃です。ツクシも土の中から出てきて、テントウムシも嬉しそう。春めいた版画が届きました。


さて、そんなあたたかな版画を前に、ホント無粋な話だけど、スギナの別名は「地獄草」だ。

スギナを手作業で除草すれば、その名の由来も尤もだ、とわかる。地上に出ているのはほんのわずかで、地下茎がずるずるずるずるっとつながっている。たいてい途中で切れてしまう。どこまでつながってるんだこいつ、なるほど地獄までってことね。

強い草だからちょっとやそっとでは枯れないのだろう。除草剤の謳い文句のひとつに「スギナに効く」がある。僕も何度か除草剤の誘惑に駆られた。

家庭用の除草剤は安全だ、という。土中では無害化されるということになっている。いっぽうで、農耕地には使えない、とされる、なんでも枯らすという除草剤が、なんの制約もなく売られている。誰でも買える。いくらでも撒ける。素人にこんなものを無制限に販売、使用させてしまって、どこかで、とてつもないひずみを生み出すのではないか。

これは確固たる根拠のある恐怖ではないんだけど、恐怖っていうのは、大抵そういうものではないだろうか。わからないこと、感覚を超えたものが恐怖だ。原子力の怖さも、自分の感覚器で感知することのできないところにあって、根は同じようなものだと思う。

スギナを通じて数センチだか数メートルだか下の地獄とつながっておくほうが、ずっと心地いい。

文/佐塚昌則


たかだみつみ

たかだみつみ  たかだ・みつみ創作木版画家

新潟県長岡市生まれ。東京伝統木版画版元勤務を経て 現在、創作木版画家として活動中。また、イラストレーションやデザイン等も手掛ける。「身近なものを大切に愛おしんで丁寧に生きる。」をコンセプトに作品制作をしている。長岡造形大学 非常勤講師。