森里海の色
木版画が彩る世界「ネムノキ」

夏の夕方から咲く花が、まさに夜空の花火のような、そんな版画が届きました。一方で、葉は夜になると閉じて、まるで眠ったようになるのが、このネムノキです。


 
ネムノキ、漢字では合歓木、とされているが、これは当て字というか、漢名がそのまま使われている。
小葉が夜間になると閉じて、眠っているように見えるから、本来は「眠の木」なのだろう。

ネムノキが夜に葉を閉じるのは、物理的には葉の付け根の細胞内の水の量の変化による、ということらしい。このように、植物が夜にまるで寝ているような状態になることを、「就眠運動」という。

なぜ植物が眠ったようになるのか? チャールズ・ダーウィンは、夜間の放射冷却で葉が冷えることを防ぐためではないか、とし、生物時計の権威であるドイツの植物学者、エルヴィン・ビュニングは、月明かりなどで生物時計がリセットされることを防ぐためではないか、と述べている。

寒いから、とか、明かりで眠りのリズムが狂っちゃうから、とか。まるで人間のようだ。
けれど、これらの裏付けは、未だとれていない。

わかっているのは、眠る植物を化学的に「不眠症」にすると、すぐに死んでしまうということだから、彼らには睡眠が必要だ、ということだけは確かなようだ。
思い返せば、人間も、眠らないで過ごすことは出来ないことはわかっているが、いったいなぜ眠るのかの動機なんて、やっぱりはっきりしていない。けれど眠らずにはいられない。

自身のことでいうと、人間に本来そなわっている生物時計を、自ら日々壊している。内なる自然破壊をしているような気になってくる。
ということで、ネムノキにかこつけて、生物時計を正しくリセットし、規則正しい生活をしようではないか(という願望)。

文/佐塚昌則