森里海の色
木版画が彩る世界「ナツハゼ」

夏に見事な紅葉をするナツハゼ。空には優雅に舞う鷹の姿が。


 
版画には、空を舞う鷹が描かれている。二十四節気・小暑の末候は「鷹乃学習」、ちょうどこの頃は、鷹の雛が、巣立ちの準備をする頃だ。

オオタカは、里山の食物連鎖の頂点とされているが、その里山自体が激減したため、オオタカの生息地も極めて少なくなっている。
平成10年には、環境省レッドリストで絶滅危惧Ⅱ類(VU)だったものが、平成18年、24年、そして今年発表されたリストでは、ともに準絶滅危惧(NT)で、絶滅の危機は少し減った、ということらしい。けれど、これで安心してよい、というものではない。

版画のメインのテーマになっているナツハゼも、神奈川県で絶滅危惧Ⅱ類の指定を受けていて、野生での絶滅が心配される植物だ。オオタカよりは目にする機会があるのになあ…と思うけど、地域によっては滅多に見られないものらしい。

ナツハゼは、ハゼという名がつくが、ウルシ科ではなく、ブルーベリーと同じツツジ科で、やはりブルーベリーそっくりな実をつける。
木の実は、鳥に食べてもらって種子を遠くに運ぶために存在するのが常で、ナツハゼも例外ではない。だから、ナツハゼを植えれば、紅葉も楽しめて、実をもとめてやってくる鳥も楽しめる。
実をジャムにすることだってできる。

一本の木を植えるだけで、こんなに豊かになれるのだ。絶滅も心配される植物だけど、だからこそ大切に育てたい。いつかオオタカ、来るかなあ…。

文/佐塚昌則