森里海の色
木版画が彩る世界「クズ」

ぐんぐん伸びる弦と葉に比べると、控えめな、けれど甘い香りでしっかり主張するのが、クズの花です。秋の七草にも選ばれているクズには、これまたたくさんの逸話があります。


 
クズは秋の七草として古くから親しまれ、葛切りや葛餅といった食用や、葛根湯のような漢方薬などの原料にもなっている。
というより、そういう原料につかったり、「つる」を材料として用いたり、ということで人間が刈り取らないと、旺盛な生命力で周囲を覆い尽くしてしまう。

19世紀末から20世紀初頭に、クズは旺盛な繁殖力を買われて、クズはアメリカに輸出された。アメリカの荒れた土地を緑化する「奇跡のつる植物」といわれ、もてはやされた。
だが、繁殖力が強く、どんな土地にでも根付く、ということは、望んでいないところにも生えてくる、ということだ。かつて開拓地に放牧されていた家畜がクズを食べていたが、今は畜舎で肥育されるようになって、それもなくなった。クズは繁殖し放題となって、今でも生息域を広げている。『タイム』誌が特集した「20世紀の失敗ワースト100」に選ばれるという不名誉も受けた。

2017年の日本では、「葛の花」に由来する機能性表示食品に事実と異なる痩身効果をうたったとして、一挙に16社を対象とする措置命令が出された。機能性表示食品への措置命令としてははじめてのものだ。

クズの花由来のイソフラボンで、あたかも何もしなくても痩せるような広告をしていた、というものだ。

僕は機能性表示食品のうさん臭さを、制度開始当初からずっと問題視している。審査はなく、届け出だけでよい、としていたからだ。ようするに言ったもの勝ちなのだ。

下のサイトから機能性表示食品の届出内容が検索できる。すべての製品を見たわけではないが、だいぶいい加減だよなあ、というのが実感だ。

機能性表示食品の届出情報検索
https://www.fld.caa.go.jp/caaks/cssc01/

アメリカの話にしても、日本の機能性表示食品にしても、人間の欲望にクズが巻き込まれただけで、当然ながら、クズに罪はない。

文/佐塚昌則