森里海の色
木版画が彩る世界「フクジュソウ」

立春大吉、二十四節気は新年がやってきました。新年を飾る版画は福寿草。元日草とも呼ばれる、初春を彩る花です。


 
立春は暦便覧に「春の気立つを以ってなり」とある。暦の上では春、なのに寒いじゃないか、ということが殊更に強調されがちだけど、当然ながらこの日からいきなりポカポカあたたかい春がくるのではない。ちょっとずつやってくるのだ。そう思って周りを見れば、「春の気立つ」はたくさんある。

初春の花はフクジュソウ、漢字で書くと福寿草という、なんともめでたい名前がついている。旧正月の頃に咲くから元日草、という名前もある。花言葉は「永久の幸福」というから、まさに幸せいっぱいの花というわけ。雪国では、ちょうど雪解けの頃この花が咲くというから、春の訪れを告げてくれる嬉しさもあるだろう。

僕もこの花のエピソードを、と考えていたら、何十年も前の小学生時代まで遡ってしまった。フクジュソウは10円切手の絵柄だった。大人の趣味に憧れて切手など集めようとしていたのだが、幼い身空では現行切手が関の山だったから、10円切手というのはちょうどいい金額だった。やがて価値が出る、なんて欲もあったのかなあ(たぶん出てないけど)。

10円切手の絵柄は、変遷を経て、今は鳥のトキになっている。昨年、郵便はがきの料金が10円上がった。いまこそ当時の10円切手が活躍するとき、と思い立って過去のコレクションを探したけれど、どこにも見当たらない。

トキよりフクジュソウのほうが珍しいとは、これいかに。とはいえフクジュソウも一度は絶滅が危惧された種でもある。切手はともかく、実物は大切に。

文/佐塚昌則