はじめてのこよみ暮らし

七十二候をはじめて過ごす「家族」の記録

菊枕

菊の季節のものづくり

夜10時、しほと太郎は家に向かい浜松市内で車を走らせています。

太郎 編集長、あのお店の看板見てください!
しほ ……。
太郎 編集長、聞いてますか??
しほ ……。
太郎 おーい!
しほ あっ、あのビニルハウスって何を栽培しているんだろう?
太郎 え?あー、あれはきっと菊ですね。
しほ 菊かー。もう菊の季節なんだね。この辺りは菊の産地なのかな。
太郎 浜名湖周辺には菊農家が多いようですね。そうだ。編集長はお酒は飲めませんでしたよね?
しほ うん、全然だめ。
太郎 それでは、次の「はじめてのこよみ暮らし」は菊枕を作りましょう。
しほ 菊枕、何それ?
太郎 昭和時代に杉田久女という人が作った健康枕です。頭痛や目まいに効く枕なんだそうです。
しほ ふーん。よくわからないけど寝てみたいな。

杉田久女は菊枕を有名にした九州の女流文筆家。松本清張が「菊枕-ぬい女略歴-」というタイトルで杉田久女をモデルに小説を書いています。太郎はよく知っていましたね。
翌朝午前8時半、車は浜松湖のほとりにある庄内朝市に着きました。

庄内朝市

しほ ひと全然いないね。
太郎 もう終わっちゃいましたかね。

売り場には、お婆が座って店番をしていました。

しほ すみません、菊売ってますか?
お婆 つぼみのもの以外は全部売れちゃった。みんな早いんだよ。この時間になると売り切れちゃうの。
太郎&しほ えええー!
太郎 私たち菊枕を作りたいんです。どこかで菊は売っていませんか?
お婆 菊枕? 知らないねぇ。
太郎 菊を干して布につめてつくる枕です。
お婆 そうすると、咲いている方がいいかもね。はままつフラワーパーク前のアグリスなら売っているかもよ。
太郎&しほ ありがとうございます。

車で10分ほど市街地の方向へ戻り、しほと太郎は産地直売所の「アグリス浜名湖」を訪れました。

太郎 こっちはまだ賑わっていますね。
しほ 珍しい野菜も多いね。ピーナッツバターかぼちゃだって! スープにするとおいしいらしいよ。
太郎 菊はどこでしょうか?。
しほ ここ! いろんな色の菊が売っているね。
太郎 ですね。
しほ 何色の菊がいいかな。
太郎 黄色がいいんじゃないですか。これくらいあれば菊枕一年分はできますね。
しほ 一晩分なら菊一束で足りるかな?
太郎 まあ、それくらいあれば足りるでしょう。

菊枕を作ろう

アグリス浜名湖から帰ってきたしほと太郎。さっそく菊枕作りをはじめます。

しほ 菊枕を作るには、まずどうするの?
太郎 茎から菊花の部分をもぎとります。やってみてください。
しほ なんかもったいないね。
太郎 こういうのはひとおもいに。ぐいっ(菊花をもぐ音)
しほ 私もやろうっと。

太郎は南向きのガラス戸に向かって新聞紙を広げ、しほはその上にもぎとった菊花を置いていきます

しほ 70輪くらいもぎとったかな。
太郎 とりあえずこのくらいにしますか。並べるだけで綺麗ですね。

新聞紙に菊

しほ あとは、どうするの?
太郎 二日ほど太陽光で干します。
しほ 菊枕って、すぐにはできないんだね。

干し始めて二日後。菊花はいっぱいお日さまを吸い込んだようです。

しほ あんなにきれいに咲いていたのに、だいぶ萎れたね。
太郎 ですね。さて、編集長、何か袋はありますか?
しほ 飴玉をいれていた遠州綿紬の巾着ならあるよ。
太郎 きれいな生地ですね。では、その巾着に菊花を入れましょう。

しほと太郎は巾着に萎れた菊花を次々と投げ入れていきます。

しほ はい、できた。
太郎 どうですか? 菊枕は匂いますか。
しほ かすかに。匂い袋みたいな感じかな。
太郎 それでは、これを編集長の枕に置きます。
しほ で、どうするの?
太郎 このうえで編集長が寝ます。
しほ えーすぐになんて寝れない……ぐー・がー。
太郎 早いですね。やっぱり、おつかれだったんですね。

しほは菊枕にほほを寄せながら朝を迎えました。

太郎 編集長、おはようございます。
しほ お、はよう。
太郎 よく眠れましたか?
しほ まぁ、いつも通りかな。
太郎 菊の匂いはしましたか?
しほ う~ん。寝返りを打ったときに香ったかな。
太郎 疲れはとれたんじゃないですか?
しほ うーん。まぁ、寝たからね。
太郎 そ、そうですか。
しほ 菊の香りが好きな人にはいいと思うよ。

菊枕の効果はしほにはわからなかったようです。菊の量を増やしたり太陽に干す期間を伸ばしたりすると効果が出てくるかもしれませんね。
ここまで読んでくださった方はありがとうございます。ぜひご自宅で菊枕を試してみてはいかがでしょう?

耳奥を金切り声の菊枕 林甲太郎


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