はじめてのこよみ暮らし

七十二候をはじめて過ごす「家族」の記録

収穫の秋。

しほと太郎は取材のため静岡県浜松市の白羽町を車で移動していました。赤信号で車を停めたとき、太郎は田んぼに何かを見つけたようです。

白羽町の水田

太郎 編集長、あの田んぼを見てください。
しほ 稲刈してるね
太郎 はい。稲刈をしているコンバインもそうですが、白鷺がいっぱい集まってませんか。
しほ そういえば白鷺がいっぱい。お米を食べたいのかな。
太郎 かもしれませんね。白鷺が多いからここの地名は白羽町なんでしょうね。お、青信号、ブィーン(アクセルをふむ音)
しほ そういえば次の七十二候は何だっけ。
太郎 水始涸みずはじめてかるです。
しほ どういう意味だっけ。
太郎 田んぼの水を涸らして、稲刈に備えることです。はっ、そうだ。次の「はじめてのこよみ暮らし」はこれにしましょう。
しほ えっ、何にするの?

太郎は何かひらめいたようです。

しほ この車はどこへ向かっているの? びおのリニューアル作業で私、疲れてんだけど。
太郎 国道150号線で御前崎市へ向かっています。ほらっ太平洋沿いに風力発電機の巨大プロペラが見えますよ。
しほ ほんとだ。かっこいい。
太郎 一基だけ回ってないプロペラは私みたいですね。
しほ どういうこと?

カカシ祭り。

彼岸花の季節が終わろうとしているころ、車はとある川沿いにある公民館の駐車場に着きました

しほ どこ、ここ? 山と田んぼ。
太郎 静岡県御前崎市の新野地区で開催されている新野カカシ祭りの会場です。
しほ カカシってあの、田んぼとかにある?
太郎 はい。案山子かがしとも言いますが、田んぼに置いて鳥にお米が食べられるのをふせいだ鳥おどしの一種ですね。新野のカカシ祭りは今年で17回目の開催で地元の子どもたちやお年寄り、それから地元の施設や企業が作り応募したカカシが飾られています。
しほ お猿さんとか、かわいいカカシがいっぱい! 浜松じゃないのに直虎ちゃんのカカシもいる!
太郎 そうですね。大河ドラマ「おんな城主直虎」に、ここ新野出身の武将・新野左馬助が出ているらしいですね。
しほ そーなんだ。旬だね。
太郎 これなんかほのぼのしているカカシですね。
かかし或いはかがし
しほ 布とかにも凝ってそう。これっておかんアートかも。
太郎 おかんアートって何ですか?
しほ 阪神淡路大震災のあと神戸のおかんたちが町を元気にしようとして作った独特な味わいのある編み物のことだよ。たとえばキャラクターの編み物を作ったのに全然そのキャラクターに見えないってのも、おかんアートの味わい。
太郎 言われてみればそうですね。このちえみちゃん35億というタイトルがついたカカシもおかんアートですね。
しほ 確かに。

ブルゾンちえみ?

二人は車で浜松へ帰ります。帰りながら、しほはかかしを探して田んぼを眺めてみました。

しほ カカシ祭へ行った帰りになんなんだけど。
太郎 はい?
しほ 田んぼではほとんどカカシ見ないねー。
太郎 そうですね。今は巨大な目玉の風船がカカシがわりになっていることが多いですね。
しほ 今も昔もやりかたがちがうけれど、農家の人はお米のひとつぶひとつぶも大事にしているんだね。食べる私たちもひとつぶひとつぶ大事にしないとねー。
太郎 いいことに気づきましたね。お米を大事に食べる方法として中小路さんが紹介している土鍋で蒸らす方法や柳行李を使う方法があります。
そのほかにもおひつを使うという方法がありますよ。おひつは水分をよく吸って長くご飯を入れていてもべたつかないんです。
しほ おひつ? またまたお線香くさいこと言うねー、チミは。でも土鍋で蒸らす記事はお米がいきいきしていたね。おひつも良さそう。おひつはどこで買えるだろー。
太郎 ショッピングモールへ行ってみてはどうでしょう?

おひつはおひつでも

翌日、しほはおひつを買ってきました。

しほ やっほー、太郎が言ってたおひつってこれでいいよね、ほら。二千円もしなかった。
太郎 え……!
しほ どうしたの? 太郎が言ってたやつだよ。
太郎 これは、おひつでも飯びつではなくて米びつですね。私が言っていたのは、ご飯を炊く前にお米をいれておくおひつじゃなくて、ご飯を炊いたあとにご飯をいれておくおひつだったんですけどねー。
しほ えー、言ってくれなきゃわからないよ。
太郎 でも桐でできているから調湿機能はあるようです。せっかくですし、米袋に入っていた新米を米びつに移しかえますか。
しほ そうだね。お米のひとつぶひとつぶを大事に、だね。

案山子言ふ人に生まれてよかつたと 林甲太郎


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