
村松篤さん
住まいのグラフィティ
七十二候をはじめて過ごす「家族」の記録
しほ 相変わらず風が冷たいね。
太郎 まだまだ浜松は西風が強いですね。ところで何で僕たちは舞阪漁港に来たんだっけ。
しほ え、言ったじゃん。春告魚がシラウオだというからそれを食べにきたんだよ。
太郎 編集長、舞阪で採れるのはシラウオではなく、シラスですよ。
しほ え、そうなの!
太郎 まぁ、気を落とさないで。シラスも確か春から採れるらしいので春告魚でも間違いないでしょう。
しほ そういえば通りすがりにあった本陣とか脇本陣って何?
太郎 殿様が停まる旅館ですね。舞阪宿は東海道の宿場町だったので、参勤交代の大名が泊まったんです。
しほ あ、ここだ!
しほ ここは入社前に社長に連れて行ってもらったお店だね。
太郎 おお、なつかしいですね。入りましょう。
しほ すみません、シラスは今の旬ですか?
お店 シラスは3月から漁が解禁になるんですよね。
しほ そうなんですか。今の旬は何ですか?
お店 今は海苔です。これは全部ぶち海苔といって青海苔と黒海苔をまぜたものなんです。炙って海苔の味を楽しんで食べるんですよ。
太郎 では、ぶち海苔を一帖ください。
お店 はい、ありがとうございます。
太郎 ガスコンロのガスボンベがないのでトースターで焼きましょうか。
しほ 焼き時間は一分くらいかな。
太郎 焼き過ぎるとピリッっという苦味が出るそうですから、そのくらいでしょう。
太郎 少し色が青みがかってきましたね。
しほ いい匂いもしてきたよ。
太郎 ああ、いいですね。お米を炊きたくなりますね。
しほ うん、海苔だね。
上顎にひつつく恋や海苔あぶる 林甲太郎