森里海の色
四季の鳥「ヤマガラ」

芸達者な春告げ鳥

毎年、4月中旬はすこし遠出をして富士山麓に行くことにしています。まだ冬の風景が支配する山麓に木々は萌葱色に染まりはじめ、一年で最も清々しいバードウォッチングを楽しむことができます。葉桜の下で野鳥たちが吸蜜に来るのをしずかに待っていると、ツーツーピー、ツーツーピーとさえずりが近づいてきて、ヤマガラが姿を見せました。
ヤマガラは日本ではほぼ全国的に平地から広葉樹の山地で見られる鳥です。雌雄同色で、頭部は黒と薄クリーム色、背と腹は茶褐色、肩羽と翼は暗青灰色をしており、大きさは14センチ、スズメとほぼ同じ大きさの鳥です。
子どもの頃、縁日でおみくじを引いてくれる鳥がいました。おじさんにお賽銭を渡すと、おじさんは鳥篭を開けます。出てきた鳥はお賽銭をくわえ、賽銭箱に賽銭を落として小さなお宮の扉を開き、おみくじを持ってくる。あの利口な鳥がヤマガラであることを知ったのは大人になってからでした。

やまがらめ

くちばしの太くて短いヤマガラがどのようにして桜の吸蜜をするかを観察していると、メジロのように花にくちばしを差し込むことはせず、花柄をくちばしでちぎって足で押さえて、子房の部分から器用に吸蜜していました。
ヤマガラの器用さに驚くのは、秋になってエゴノキが実を付ける時です。上手に両足で実を挟み、有毒なサポニンを含む厚い果皮と硬い殻を割って、器用に種子だけ食べることができるのはヤマガラだけです。ヤマガラは、その場で種子を食べるだけでなく、実の付いた花柄をくわえてどこかに飛んでいき、また戻ってきて、またくわえて飛んでいきます。ヤマガラはこの時期、エゴノキの種子を木のウロや地面にさかんに埋めています。備蓄した種子は冬の間の貴重な食料になっているのでしょう。
ある研究によると、エゴノキの果皮が付いたまま自然落下した種子と果皮を除去した種子の発芽率を比較すると、果皮なしの種子の発芽率が大幅に高く、ヤマガラによる種子貯蔵がエゴノキの種子散布に大いに貢献しているというのです。世の中、やはりお互い様で成り立っているわけですね。



真鍋弘

真鍋弘  まなべ・ひろし編集者

1952年東京都生まれ。編集者。東京理科大学理学部物理学科卒。月刊「建築知識」編集長(1982~1989)を経て、1991年よりライフフィールド研究所を主宰。「SOLAR CAT」「GA」等の企業PR誌、「百の知恵双書」「宮本常一講演選集」(農文協)等の建築・生活ジャンルの出版企画を多く手がける。バードウォッチング歴15年。野鳥写真を本格的に撮り始めたのは3年前から。