森里海の色
四季の鳥「タゲリ」

冬の田んぼの貴公子

初冬の頃、収穫の終わった田んぼや休耕田に、シベリア南部・中国東北部から渡ってくるタゲリという美しい冬鳥がいます。ハトくらいの大きさで、反り返ったおしゃれな冠羽を付け、羽は光沢のあるダークグリーン、光線の具合で紫にも見えます。いつも群で行動し、ふわりふわりと特徴のある飛び方をします。
11月上旬、他県まで探鳥に行き、田園地帯を車で流していると、「ミャー」と猫のような声が空から聞こえ、40羽ほどのタゲリが田んぼに降り立ちました。とても警戒心の強い鳥で、写真は車内から撮ったものです。

タゲリ

タゲリの食べ物はミミズや昆虫。近年の田んぼの消失、乾田化はタゲリにとって死活問題です。私が暮らす神奈川県の湘南地方に湘南タゲリ米というプロジェクトを行っているグループがあります。タゲリが越冬できる水田の生物環境を維持するため野鳥愛好家と地元稲作農家が協力して米づくりと環境保全、米の販売を連携させた取り組みです。
つくられたお米は学校給食やふるさと納税のお礼品にも使われています。こうした取り組みによって、2000年頃には県内でまれに見る程度だったタゲリは少しずつ回復傾向にあります。貴重な野鳥が訪れる都市近郊の水田環境を子どもたちに残すために、こうした取り組みが全国に広がっていくといいなあと思います。

著者について

真鍋弘

真鍋弘まなべ・ひろし
編集者
1952年東京都生まれ。東京理科大学理学部物理学科卒。月刊「建築知識」編集長(1982~1989)を経て、1991年よりライフフィールド研究所を主宰。「SOLAR CAT」「GA」等の企業PR誌、「百の知恵双書」「宮本常一講演選集」(農文協)等の建築・生活ジャンルの出版企画を多く手がける。バードウォッチング歴15年。野鳥写真を本格的に撮り始めたのは3年前から。