森里海の色
四季の鳥「セイタカシギ」

竹馬のようなピンクの足

スマートなシギの中でもダントツにスマートなセイタカシギという鳥がいます。初めてこの鳥を観たときにはこれでよく足が折れないものだと感心したものです。
英名はBlack-winged Stilt、黒い翼の竹馬。確かに竹馬のような長い足の持ち主です。全長37センチ、翼を広げた長さは70センチ、足の付け根から指先まで25センチもあります。
セイタカシギの食べ物は昆虫やエビ・カニなどの甲殻類、小魚、ゴカイなどの動物食です。長い足を使って水辺を歩き回り、他のシギやチドリが入り込めない深場でも嘴を水中に差し込んで採餌することができます。

背高鷸

かつてセイタカシギは日本ではまれに記録される程度の珍しい鳥でしたが、1970年後半に全国的に湾岸に埋立地が増えると、いくつかの地域で繁殖が確認されるようになりました。神奈川県でも最近は多摩川河口で一年を通して観察されるようになり、また干潟だけでなく大きな河川や休耕田で夏に観る機会が増えたことは、シギの仲間が軒並み減少している状況のなかでは珍しく、とてもうれしいことです。
セイタカシギの日本での繁殖時期は4~6月。雄と雌は協働して水際の見通しの良い場所に枯れ草を重ねて巣をつくります。1回に生む卵は3~4個。抱卵は雄雌交代しながらおこないます。
昨年6月上旬、房総半島の蓮田でセイタカシギの抱卵のようすを観察することができました。写真はその時に撮ったものです。蓮田の水面よりすこし高いさえぎるもののない畦で、雌のセイタカシギが抱卵中でした。水害や外敵から卵を奪われてもおかしくない無防備な環境です。孵化率が2割に満たないと言われているのもうなずけます。
蓮田では少し先に孵った雛が成鳥に混じって自分で餌を採っていました。セイタカシギは抱卵から3週間ほどで孵り、孵ると雛はすぐに巣から出て歩き出し、自分で餌を採るようになります。そのかわいいこと、健気なことといったらもうたまりません。

著者について

真鍋弘

真鍋弘まなべ・ひろし
編集者
1952年東京都生まれ。東京理科大学理学部物理学科卒。月刊「建築知識」編集長(1982~1989)を経て、1991年よりライフフィールド研究所を主宰。「SOLAR CAT」「GA」等の企業PR誌、「百の知恵双書」「宮本常一講演選集」(農文協)等の建築・生活ジャンルの出版企画を多く手がける。バードウォッチング歴15年。野鳥写真を本格的に撮り始めたのは3年前から。