森里海の色
四季の鳥「モズ」

気の強さと美しさ

もずの声かんにん袋破れたか  一茶

キチキチ、キーキッキッ。公園や里山を散歩していてモズのするどい高鳴きをよく聞く季節になりました。私の暮らす神奈川県では1年中いる鳥ですが、繁殖期後の夏はほとんど見られず、モズの高鳴きを聞いて、ああ秋になったと思うのです。高鳴きはモズの縄張り宣言、オスもメスもします。テリトリーの中にいる鳥は同類でなくても、ツグミやヒヨドリなど自分より大きな鳥でも追いかけて威嚇します。この気の強さと美しさを同時に持っているところが、モズのたまらない魅力です。

モズ-鵙-百舌鳥

モズの食事は主に昆虫やトカゲ、カエル、ミミズ、毛虫などの動物食ですが、捕らえた獲物をとがった枝先に挿す「はやにえ」という不思議な行動をします。獲物を保存するためだとか、食べやすいように獲物を固定するためだとか、いくつかの説がありますが、本当のところはモズにしかわかりませんね。一茶の面白い句をもう一つ紹介しましょう。草茎とははやにえのことです。

草茎を預けばなしで又どこへ 一茶

著者について

真鍋弘

真鍋弘まなべ・ひろし
編集者
1952年東京都生まれ。東京理科大学理学部物理学科卒。月刊「建築知識」編集長(1982~1989)を経て、1991年よりライフフィールド研究所を主宰。「SOLAR CAT」「GA」等の企業PR誌、「百の知恵双書」「宮本常一講演選集」(農文協)等の建築・生活ジャンルの出版企画を多く手がける。バードウォッチング歴15年。野鳥写真を本格的に撮り始めたのは3年前から。