森里海の色
四季の鳥「ミユビシギ」

黄昏の渚を彩る群

ここ数年、正月休みには車で30分ほどの海岸に午後から出かけていきます。ミユビシギという私が大好きなシギ科の鳥を見るためです。ミユビシギはユーラシア大陸や北アメリカ北極圏などで繁殖し、冬は遠く東南アジア、オーストラリア、南アメリカ方面まで飛び、越冬する鳥です。日本の海岸では春と秋の渡りの時期に見られますが、幸運にも私が暮らす神奈川県の三浦半島や湘南海岸では少数の越冬群がいます。
正月の海岸は家族連れや若いカップルで賑わっており、30羽ほどのミユビシギの群が飛んできましたが、降りるところがなく、またどこかに飛んでいってしまいました。私は日が傾きかけて海岸から人影が減り、ミユビシギがまた訪れるのを渚から少し離れた砂浜の斜面に胡座をかいて静かに待ちます。
渚が夕日を浴びて、まるで水銀を流したようにとろ~りと赤く輝き出す頃、ミユビシギの群は近くの船着き場に集まり、寄せては返す潮を避けながら漁船を揚げ下ろしするための桟木に付いた藻を食んでいました。知人の鳥類研究者は食べているのは藻そのものではなく、藻に付いたバイオフィルムだろうと教えてくれました。

三趾鷸

近くでワカメの採取から戻った漁師が舟の後片付けをしていて、ワカメの根っこを海に捨てに来ると、ミユビシギの群は少しばらけて、数羽が私のほうに渚を駆け出します。すると次々にまるで水が流れるように群がその後に続きます。その疾走する姿の可愛さといったらありません。
海岸に遊びに来た人が船着き場の背後からふいに姿を現すときがあります。それに驚いたミユビシギは一斉に海に向かって飛び立ち、湾の中央でUターンして私に向かって飛んできます。私がカメラを構えて辛抱強く待っていたのはこの一瞬でした。



真鍋弘

真鍋弘  まなべ・ひろし編集者

1952年東京都生まれ。編集者。東京理科大学理学部物理学科卒。月刊「建築知識」編集長(1982~1989)を経て、1991年よりライフフィールド研究所を主宰。「SOLAR CAT」「GA」等の企業PR誌、「百の知恵双書」「宮本常一講演選集」(農文協)等の建築・生活ジャンルの出版企画を多く手がける。バードウォッチング歴15年。野鳥写真を本格的に撮り始めたのは3年前から。