森里海の色
四季の鳥「コシアカツバメ」

燕帰る

燕は春の季語ですが、秋の季語に燕帰るがあります。帰燕、秋燕、去ぬ燕なども同様です。
夏の間、人家の近くでかわいい子育てを見慣れていたツバメが、ある日気が付くと周囲から消えていた。そんな寂しさを詠んだ句が昔から多く残されています。

落日のなかを燕の帰るかな 蕪村
燕はやかへりて山河音もなし 楸邨
燕去んで部屋部屋ともす夜となり 碧梧桐

10月初旬、秋晴れの朝に出勤途中の電線の上にたくさんのコシアカツバメが集まっていました。毎年、同じ時期に同じ電線に集まります。群をつくってこれから南に帰るのです。コシアカツバメはツバメの仲間で、海岸近くに多く生息する鳥です。嘴の下からお腹にかけて白く黒褐色の縦斑があり、飛ぶと腰の部分の橙色が目立つので、他のツバメの仲間と識別することができます。ジュリィジュリィと、ツバメのチュピッよりすこし濁った声で鳴きます。

コシアカツバメ

私が暮らす地域では普段ツバメを市街地で目にすることが多いのですが、コシアカツバメを目にすることはあまりありません。彼らが団地の高層階の踊り場のような高いところを好んで営巣することも人の目につきにくい原因なのでしょう。
コシアカツバメが群をなして電線に止まるのは数日間。今朝も見られるかなと楽しみにしていると忽然と消えている。そんな経験を毎年のように繰り返しています。

著者について

真鍋弘

真鍋弘まなべ・ひろし
編集者
1952年東京都生まれ。東京理科大学理学部物理学科卒。月刊「建築知識」編集長(1982~1989)を経て、1991年よりライフフィールド研究所を主宰。「SOLAR CAT」「GA」等の企業PR誌、「百の知恵双書」「宮本常一講演選集」(農文協)等の建築・生活ジャンルの出版企画を多く手がける。バードウォッチング歴15年。野鳥写真を本格的に撮り始めたのは3年前から。