森里海の色
四季の鳥「カワガラス」

渓流の素潜り名人

ここ数年、春に少し遠出して出かける探鳥地に奥日光があります。4月下旬の今頃はようやく湯川沿いにオオヤマザクラが咲く頃。平地より一月遅れで春がやって来ます。
湯川に沿って林の中を歩いていると、渓流すれすれに一直線にビィービィーと太い声で鳴きながら飛んでいく黒っぽい鳥を見ます。カワガラスという鳥です。牧水もそうした光景を歌に詠んでいます。

川鴉なきすぎゆきぬたぎつ瀬のたちき輝き流る上を

若山牧水

カワガラスはカラスと名前に付きますが、カラスの仲間ではありません。スズメ目カワガラス科の鳥で、日本にいるカワガラス科の鳥はカワガラス1種だけです。全長22センチ、ヒヨドリより少し小さい鳥で、翼は短め、ずんぐりした体型です。沖縄を除いて日本全国の平地から亜高山帯の渓流に生息しています。
カワガラスの特徴はなんといってもその泳ぎのうまさ。渓流の岩陰を双眼鏡でくまなく探してやっと見つけたカワガラスが、突然姿を消してしまうことがあります。浅瀬では歩きながら採餌しているカワガラスは水深のある場所では潜って餌を探します。彼らの食べ物はトビケラ、カゲロウ、カワゲラといった水生昆虫や小さな甲殻類です。

川鴉

カワガラスの繁殖行動はまだ寒い2月頃、他の鳥よりもかなり早くから始まりますが、これは雛に餌を与えるタイミングを水生昆虫の発生時期に合わせているからだと言われています。渓流の岩間などにコケなどを利用して30センチほどの球形の巣をつくり、雌は4、5個の卵を産みます。雌の抱卵15、16日で孵化、雄雌協力しての育雛3週間ほどで雛は巣立ちます。湯川沿いを歩いていて、巣立ち雛を見たことがあります。茶、白、黒が混ざった鱗模様のまん丸の姿。まだ飛べなくても水中に潜ることはできます。
カワガラスを観察していると、時々、目が白くなることがあります。これはカワガラスが瞼を閉じたためで、驚くのは瞼が下瞼だということです。瞼が下から上に閉じるのは上方にいる天敵のタカ類をいち早く察知するのに有利だからと考えられています。



真鍋弘

真鍋弘  まなべ・ひろし編集者

1952年東京都生まれ。編集者。東京理科大学理学部物理学科卒。月刊「建築知識」編集長(1982~1989)を経て、1991年よりライフフィールド研究所を主宰。「SOLAR CAT」「GA」等の企業PR誌、「百の知恵双書」「宮本常一講演選集」(農文協)等の建築・生活ジャンルの出版企画を多く手がける。バードウォッチング歴15年。野鳥写真を本格的に撮り始めたのは3年前から。