森里海の色
四季の鳥「イソヒヨドリ」

魅了する磯の澄んだ囀り

ここ10年ほど家から仕事場まで30分ほど歩いて通っています。その道すがら何種類の鳥を見つけることができるか、肉眼で探しながら通勤することが、いつの間にか習慣になっています。特に記録を取っているわけではありませんが、冬の8時台だと8~10種類、7時台だとこれに2、3種類追加といったところでしょうか。スズメ、メジロ、ヒヨドリ、ムクドリ、ハシブトガラス、トビなどが常連さんです。今日は家を出ると、すぐに民家の瓦屋根に常連さんとは違う鳥を見つけました。イソヒヨドリの雄でした。こんな日は朝から少し得をした気持ちになります。
イソヒヨドリは私が暮らす神奈川県の相模湾沿岸地域では一年を通して見られる鳥ですが、とくに秋から春先にかけて見かけることが多い鳥です。名前にヒヨドリと付いていますが、分類上はヒヨドリの仲間ではなく、ヒタキの仲間です。よく磯の岩礁の上にとまっているところを見かけますが、海岸地帯にだけいるわけではなく、大きな河川流域の岩場や市街地のビルやマンションの屋上、駅のプラットホームでも見かけたことがあります。
イソヒヨドリの雄はコバルトブルーと赤褐色の配色。きっと誰もが美しいと思うだろう姿をしています。姿だけでなく、その澄んだ囀りは見事です。春の磯で羽ばたきながら上空へ垂直に舞い上がり、ピーピーピーチュリチュリチュリー、フィフィフィ、ヒーヨスイスイスイと複雑にさえずる姿を見せてくれるのも、もう間もなくです。

磯鵯の雌

それとは対称的にイソヒヨドリの雌はとても地味な姿をしています。上面は灰黒褐色、下面はやや黄色味を帯びた褐色の鱗状斑です。バードウォッチングを始めた頃は薄汚れた印象しか残らなかった雌ですが、今では雄よりも雌のほうが深みのある美しい姿に見えるようになりました。これも私が年をとったという証拠でしょうか。



真鍋弘

真鍋弘  まなべ・ひろし編集者

1952年東京都生まれ。編集者。東京理科大学理学部物理学科卒。月刊「建築知識」編集長(1982~1989)を経て、1991年よりライフフィールド研究所を主宰。「SOLAR CAT」「GA」等の企業PR誌、「百の知恵双書」「宮本常一講演選集」(農文協)等の建築・生活ジャンルの出版企画を多く手がける。バードウォッチング歴15年。野鳥写真を本格的に撮り始めたのは3年前から。