森里海の色
四季の鳥「ガビチョウ」

やかましい鳴き真似上手

日曜日、早起きせずにベッドに横になっていると、外から野鳥の声が聞こえてきます。坂の上の畑からはホオジロの声、道路脇のアカメガシワからはヒヨドリ。トッキョキョッキョ、トッキョキョ、ちょうど我が家の上をホトトギスが通り過ぎました。ピッピピ、どこかでホトトギスの雌がそれに反応しています。遠くでコジュケイもチョットコイ、チョットコイと鳴いています。いくつもの声に混じって突然、沖縄の指笛のような威勢のいい鳴き声が聞こえてきました。フィチピーフィチピーピロロピロロ、フィチピーフィチピーピロロピロロ。近くでこの声が鳴き出すと、もうウトウトしているわけにはいきません。ガビチョウの声です。
10年ほど前から私が住む神奈川県三浦半島の地域でもガビチョウの声をよく聞くようになりました。ガビチョウは画眉鳥という中国名をそのまま日本読みにしたもので、文字通り、白く目立つ眉斑が泣きべそをかいたように、はたまたクレオパトラのように後方に延びていて、一度見たら忘れない姿をしています。ガビチョウはスズメ目チメドリ科の鳥で、中国南部からベトナム、ラオスにかけて生息している鳥です。全長は21~24センチ、ツグミ大の大きさで、全体に明るい茶色で、雌雄同色です。
ガビチョウを籠に入れて、その囀りを朝の公園で競い合う光景を香港で見かけたことがあります。1970年代に飼鳥ブームにのって日本に大量に輸入されたようですが、日本人にはその声はやかましいだけで、結局、ペット業者が違法に放鳥してしまったことが、これだけ全国にガビチョウが広がった原因だと言われています。
それにしてもガビチョウは鳴き真似の天才です。ウグイスのホーホケキョもうまいですし、オオルリの囀りもサンコウチョウの囀りも驚くほどそっくり。ツクツクボウシの鳴き真似だってします。これにはベテランのバードウォッチャーでもだまされます。ガビチョウにとって鳴き真似はどんな意味があるのでしょうか。やかましい外来生物ですが、私には憎めない鳥です。

著者について

真鍋弘

真鍋弘まなべ・ひろし
編集者
1952年東京都生まれ。東京理科大学理学部物理学科卒。月刊「建築知識」編集長(1982~1989)を経て、1991年よりライフフィールド研究所を主宰。「SOLAR CAT」「GA」等の企業PR誌、「百の知恵双書」「宮本常一講演選集」(農文協)等の建築・生活ジャンルの出版企画を多く手がける。バードウォッチング歴15年。野鳥写真を本格的に撮り始めたのは3年前から。