森里海の色
四季の鳥「エゾビタキ」

蝦夷からの客人

毎年欠かさず観ないことには気持ちが落ち着かない野鳥がいます。きっと、バードウォッチャーにはそれぞれそうした鳥がいるはずです。私にとって10月に観るエゾビタキはそんな鳥です。
バードウォッチングを始めて間もない頃、秋になると毎年、週末は近くの丘に登って、南に渡っていくタカの仲間を観察していました。丘を辿る道すがらいつもミズキやイヌザンショウ、アカメガシワなどの樹冠部で見え隠れしていたのがエゾビタキです。エゾビタキは植物の種子ばかりでなく、飛翔昆虫もフライングキャッチして捕まえます。地味な色合いですが、スズメより少し小さく眼がクリクリしたとてもかわいい小鳥です。他にコサメビタキ、サメビタキというエゾビタキによく似た種類がいますが、胸から脇腹にかけて暗褐色の縦斑があることで区別できます。

エゾビタキ

コサメビタキやサメビタキが夏の間日本で暮らす夏鳥であるのに対して、エゾビタキはかつて蝦夷と呼ばれたサハリンや千島列島で夏を過ごし、10月になってフィリピンやニューギニアへの旅の途中、日本の平地に寄ってくれる旅鳥です。来年も会えるだろうか、一生にあと何回会えるだろう、そんなことを考えてしまうこの頃です。

著者について

真鍋弘

真鍋弘まなべ・ひろし
編集者
1952年東京都生まれ。東京理科大学理学部物理学科卒。月刊「建築知識」編集長(1982~1989)を経て、1991年よりライフフィールド研究所を主宰。「SOLAR CAT」「GA」等の企業PR誌、「百の知恵双書」「宮本常一講演選集」(農文協)等の建築・生活ジャンルの出版企画を多く手がける。バードウォッチング歴15年。野鳥写真を本格的に撮り始めたのは3年前から。