開かれた“自然室温”へ
「熱負荷」と「熱取得」
住まいの断熱気密を高めると、室内の表面温度は低くなり、外界の影響による輻射熱の影響を受けなくなります。この効果は、エアコンを動かすと、てき面です。 しかし、断熱性能は建物の内外の熱移動の速度を緩やかにするだけで、それ自体が建物を暖めたり、冷やしたりするわけではありません。 断熱・気密は「熱負荷」を小さくする技術であり、一方、冷暖房は「熱取得」をはかることです。「熱取得」は、エアコンだけでなく、日射取入れや通風なども入ります。家族(人も犬も猫も発熱体)や、電気製品や、煮炊きなどの内部発熱も入ります。冬には、この内部発熱が有効に働きますが、夏には室温を高める側に作用します。工学的な自然室温でシミュレーションすると、意外と大きいことが分かりました。省エネ計算法の怪?
夏に室温を下げる代表的な手段は、日除けと通風と換気です。 東京の夏の夜は不快です。しかし、東京の8月の日最低気温の平年値は24.2℃です。夜間は、東京でも快適温度の範囲内にあるのです。 この時間帯は、したがって内部熱を、通風で除去(排熱)するのが有効です。 今の省エネの数値計算は、主としてQ値(熱損失係数)で計算します。Q値は、窓を閉め切った状態で計算します。この計算法では、通風も緑のカーテンも計算外です。 エコポイントで、省エネ空調機器が対象になっています。通風で涼を得るのが、本来一番の省エネである筈なのに、それは対象外です。熱負荷を低減する機器が省エネなのは、つまりQ値計算が根拠になっているからです。自然室温と体感室温
自然室温は、エアコンなどにより加熱も冷却もしていない状態をいいます。 知っておきたいのは、自然室温と体感室温の違いです。体感温度は、気温だけではなく湿度、気流、放射温度の状態によって変化します。もっといえば、着衣量、活動量などの人間的要素を加味し、建物そのものが持つ、熱容量や吸放出性能、風の揺らぎまで、微に入り細にわたって見なければなりません。 「風速1mの風に当たると体感温度が一度下がる」と言いますが、下がったのは体感温度であって、気温ではありません。ウチワや風鈴で涼しさを感じるのも体感温度です。 涼しい・冷たい・寒いは、みんな違います。特に「涼しい」という感覚は、物理学者の寺田寅彦によると「日本の特産物」(『涼味数題』)だといいます。彼はまた「涼しさは瞬間の感覚」だといいます。風鈴がチロリンと鳴る、そのときふいと涼しさを感じるのであって「あれが器械仕掛けでメトロノームのようにきちょうめんに鳴るのではちっとも涼しくはないであろう」というのです。
自然室温で暮らせる家へ
50年前までは、「自然室温で暮らせる家」は普通のことでした。エアコンが入っている家はまれで、エアコンはデパートなどの世界のものでした。電車も車も、まだ窓を開けて走っていました。 知恵と工夫を働かせ、「開かれた自然室温の家」によって、住まうこと自体に歓びを感じられる家を実現しましょう。6面体シミュレーション
右のグラフは、判明している断熱材の熱物性値をもとに、断熱材の種類・密度・厚さによって、室内温度がどう違ってくるかを、机上で性能比較したものです。 材料単体を1坪ボックスの6面全てに用いて施工したと仮定して計算します。これによって、材料単体の特性を正確につかむことができます。熱容量の大きい木繊維断熱材では、温度の変化が小さいことがわかります。冬と夏で、モードを転換させ、日射をコントロールする。
太陽は季節によって、時間によって位置が異なります。 けれど太陽の位置をデータで読めば、建物の日影図をつくれます。それにもとづいて、冬と夏の住まい計画をつくります。


