色、いろいろの七十二候

64

雀始巣・雀

雪解け水
こよみの色
春分
一斤染いっこんぞめ・いっきんぞめ #F9AE94
うすい紅染めの色。一斤の紅花で一匹の絹(匹=絹織物の単位)を染めたのが名の由来。平安時代は紅花が高価であったため、濃い紅染は『禁色』とされ、天皇の許可がない限り着用が禁止されていました。ただ、一斤染のような薄い紅染の場合は、『ゆるし色 』として身分の低いものの着用が許されており、このことから一斤染の別名を『聴色ゆるしいろ』とも呼ばれます。
雀始巣
豌豆緑えんどうみどり #A4BA5F
エンドウマメのような淡い緑色。

寒中の雀は、「ふくら雀」といわれます。電線に止まっている冬の雀は、寒気のため全身の羽毛をふくらませます。その状態を「ふくら雀」といいます。

脇へ行くな鬼が見るぞよ寒雀  一茶

何とも愛らしい寒雀は、実は晩冬の季語です。食べ物が乏しくなった晩冬、雀は人の近くまでやってきて餌を啄ばみます。

春の日や庭に雀の砂あひて  鬼貫

春になると、雀は陽気に誘われて、さらに大胆な行動を取るようになります。鬼貫の句は、そんな雀の行動を詠んでいます。
鬼貫は、江戸の俳諧師で、「東の芭蕉・西の鬼貫」と呼ばれた俳人です。この句は、江戸時代中期に詠まれた句ですが、その情景はイキイキとしていて古くありません。鬼貫は、「おにつら」と読みます。
この鬼貫の句をタイトルにした絵本があります。
英訳された俳句に、エズラ・ジャック・キーツが絵を描き、リチャード・ルイスの文があって、その訳をいぬいゆみこさんが担当されています。3種類の表現解釈を通じて文化の違いを楽しめる絵本になっています。

春の日や庭に雀の砂あひて―キーツの俳句絵本(発行/偕成社)


雀を詠んだ句は、たくさんあります。

雀の子そこのけそこのけお馬が通る  一茶
雀子や走りなれたる鬼瓦  内藤鳴雪
雀の巣藁しべ垂れて日没す  山口誓子

どの句も、身近にして愛らしい雀、という感じがよく出ています。
正岡子規は、寝たきりの生活にあって、『仰臥漫録』と『病牀六尺』を著しました。そして、たくさんの俳句をつくりました。庭先にやってくる雀は、そんな子規にとって心癒される存在だったのでしょう。子規が折に触れて詠んだ、雀の句は以下の通りです。

雀子や日毎に声の高うなる
いそがしや昼飯頃の親雀
寝おくれて鳴くや月夜の雀の子
呼ぶは子よ何をくはへて親雀
腹中に吹矢立ちけり雀の子
雀子や人居らぬさまの盥伏せ
子の口に餌をふくめたる雀哉
垣に来て雀親呼ぶ声せはし
千松や盥で伏せし雀の子
雀子や学問にうとく見え給ふ
人近く来るや雀の親心
雀子や馴れて物くふ掌
雀の子忠三郎も二代かな
文/小池一三

※リニューアルする前の住まいマガジンびおから再掲載しました。
(2012年03月20日の過去記事より再掲載)