色、いろいろの七十二候

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霞始靆・三寒四温

着替える子供
こよみの色
雨水
藍色あいいろ #165E83
・日本の伝統的な色としては、藍のみで染めた色ではなく、藍に少量の黄の染料を加え、緑がからせたものを指す。藍のみで染めた色の伝統的な呼び名は、はなだ色。
霞始靆
桑色くわいろ#DABC91
・桑の木から染まる草木染めの色。紫の実とは全く異なる染め色に桑色白茶の名も。桑色という色名は桑の木を材料にした草木染めの総称なので、幅広い色味を含みます。

高気圧と低気圧が押し合い圧し合いし、暖かさと寒さが交互にやってきます。春を迎えるまでの、そうした気候を「三寒四温(さんかんしおん)」とあらわしたりします。

ちょうど今ごろは、梅の開花の話題がよく聞かれます。
百花に先駆けて咲く、といわれる梅の開花準備は前年から行われていて、花芽はまだ寒くなる前に形成されています。花芽は冬の間は休眠していますが、その休眠から目覚めるためには一定の低温の蓄積が必要です。
目覚めた花芽が、今度は育って花開くためには、今度はある一定の暖かい温度の蓄積が必要になります。

寒い中に、急に暖かい日が一日あったからといって花が咲くわけではなく、少しずつ積算されていく温度の積み重ねが、花に春を感じさせて開花に至ります。
こうした発育に関する温度の蓄積を積算温度といい、花に限らず、魚や鳥、昆虫などさまざまな生き物にみられる現象です。

積算温度の面白いところは、ある一定温度の温度を超えた部分のみがカウントされ、それ以下の場合は、その温度は「なかったこと」として、積算されないところです。
たとえば10℃の温度を一定値としていたとすると、気温が15℃だった日は、15-10で5℃が積算されます。次の日が8℃だったとしても、2℃引かれることはありません。積算された温度が戻るわけではなく、また翌日の暖かな日を待ちます。三寒四温は生き物の発育にとって、進んだり戻ったり、ではなく、進んだり止まったり、というわけです。
生き物によってこの温度には違いがあります。だから梅は百花に先駆けて咲きますし、虫が産まれたり、果実が実ったりする時期もまちまちです。

幸か不幸か、人間にはこうした積算温度による活動の変化は、少なくとも社会通念上は見当たらなくて、寒い日が続いて積算温度が稼げなくても、暦は着々と進んでいきます。暖かい日もあれば寒い日もあります。人には暑さ・寒さを凌ぐ毛皮や羽毛がありませんが、その代わりになる衣服を生み出しました。

とはっても、被服は寒さに対する対策だけで生まれたものではありません。被服への欲求は、マズローの欲求5段階説のそれぞれに当てはまります。5段階の欲求とは、

・生理的欲求
・安全・安定の欲求
・社会的帰属の欲求
・承認の欲求
・自己実現の欲求

とされています。

寒さや暑さをしのぐための服は、生理的欲求に対応します。災害や外敵などから身を守るための服は、安定・安全の欲求に寄与します。
社会的帰属への欲求に対しては、立場や所属を表すような服装、制服だったりいわゆる正装などが対応し、承認の欲求に対しては、流行のデザインや、奇抜な服装などによるアピールが対応します。
最上位の自己実現と服装を対応させるのは、よほど服装に没入しないと難しいかもしれませんが…
ともあれ、快適な温熱環境を得る、というのは、服に求められる一番低いレベルの欲求です。

社会的帰属や承認、自己実現の欲求というのは、人が成長していく過程で生まれていくものです。これに対して、生理的欲求、安全・安定の欲求は、生まれながらにして持っているものです。

これを満たさないで、社会的帰属や承認の欲求を追求するのは本末転倒、といいたいところですが、現実的には暑いからといってパンツ一丁で職場に行くことは、たいてい容認されません。クールビズ・ウォームビズという言葉もだいぶ浸透してきましたが、裏返せば、生理的欲求よりも社会的帰属の欲求が上回っていたということです。
同じことは、住まいにも言えるかもしれませんね。

※リニューアルする前の住まいマガジンびおから再掲載しました。
(2014年02月19日の過去記事より再掲載)