色、いろいろの七十二候

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土脉潤起・ユキノシタ

雪の下
こよみの色
雨水
藍色あいいろ #165E83
・日本の伝統的な色としては、藍のみで染めた色ではなく、藍に少量の黄の染料を加え、緑がからせたものを指す。藍のみで染めた色の伝統的な呼び名は、はなだ色。
土脉潤起
黄水仙きすいせん#F2D675
・黄水仙の花のような、薄い黄色。黄水仙は南ヨーロッパの原産で、江戸末期に渡来した。

手ふきただ垂れて狭庭や雪の下  原 石鼎(せきてい)
夕焼けは映らず白きゆきのした  渡辺水巴(すいは)
軒風呂も寒からず雪の下咲いて  富田木歩(もっぽ)

ユキノシタは、季語では、雪の下とも鴨足下ともいいます。鴨足下は、下の葉2枚が長く、その左右長さが違っていて、鴨の足の形にみえるからです。
また、虎耳草ともいいます。こちらは花の形が虎の耳を連想させるからだといいます。
雪の下は、耐寒性が強く、雪が上につもっても、その下に緑の葉があることからです。
けれど、鴨足下や虎耳草と書いてユキノシタと詠ませるのはムリがあるように思いませんか。また、一般的に知られる雪の下ですが、冬の季語だとばかり思っていたら、夏の季語でした。夏の季語なのに「雪の下」というのも、おもしろいですね。

日ざかりの花や涼しき雪の下  呑舟(どんしゅう)
長き根に秋風を待つ鴨足草  虚子(きょし)
遠雷の大きく一つ鴨足草  星野立子(たつこ)

柳田国男説では、ユキノシタはイケノシタのことで、イケ(井戸)の近くに生えるからだといいます。この柳田説が、わたしには一番ぴんときます。というのは、わが家の庭にも、湿ったところに咲いていたのがユキノシタで、ドクダミと並んで、半日陰地を好む草だったからです。
ともに臭みがありますが、山菜として、加熱して、てんぷらにすると臭みは消えます。
葉を火であぶって患部に貼ると、腫瘍、火傷、凍傷に効果があります。庭に下りて数葉取ってきて、用いればいいのですから、重宝この上ない民間薬です。煎じて飲むと、解熱、鎮咳、消炎、利尿にも効くということです。漆にカブレたとき、母が葉を塩で揉んで患部に貼り付けてくれたことがあり、嘘のようにカブレが消えました。
お隣のお嫁さんに赤ちゃんが出来て、授乳で乳首に傷がついて、痛いと嘆いているのを耳にした母は、庭のユキノシタを、さっと弱火であぶり、水にしたして揉んで、それを患部に当てて治してあげたことがありました。へえ~と思ったものでした。
母は、引越しがあると、ユキノシタを根っ子から抜いて、移植しました。昔、木地師が移動するに際し、茗荷を移植するという話を聞いて、母とユキノシタを思い出したことがあります。母は、生活中心に考える人でした。

文/小池一三

※リニューアルする前の住まいマガジンびおから再掲載しました。
(2012年02月19日 の過去記事より再掲載)